どらっくすのちゃんぷる〜日記。

どうせ誰も読んでない。

2014年09月03日

怪盗記念日。

ある町に怪盗が現れた。
現れたと言っても、町長の元に予告状が届いただけ。
予告状には、こう書かれていた。
『今日の23時に、町で一番たいせつなものをいただきます。』
すぐに警察に連絡すると、警官が町役場にやってきた。
「町長、この町で一番たいせつなものとは、いったいなんでしょう?」
「うーん。なんだろう?」
「美術品とか、ないですか?」
「そういえば、美術館に一点、貴重な絵があるとか。」
「それかもしれませんね。」
町長と警官は、二人で美術館に行きました。
「館長、この美術館で一番貴重な絵はどれだね?」
「はぁ、こちらですが、いったいなんでまた?」
「実は怪盗から予告状が届いたのです。」
「ええー!それは大変だ!警察に連絡しないと!!」
「落ち着いてください。わたしがその警察です。」
とにかく大急ぎで応援を手配しようということになり、
美術館のまわりにたくさんの警察官たちがやってきた。
狭い町のことだから、すぐに噂は広まった。
「美術館に怪盗が来るらしい。」
「なんでも美術館にはとんでもないお宝が隠されてるんだと。」
「館長のやろうめ、今まで隠してやがったな。」
「どれ、いっちょ見物に行こうか。」
「そうしよう。」
田舎町のほとんど全員が、美術館のまわりに集まった。
それだけの人が集まれば、酒盛りやら井戸端会議やらが繰り広げられる。
あっという間に美術館のまわりはにぎやかになってしまった。
なにぶん娯楽の少ない田舎町だ。
みんな怪盗が来るのを心待ちにしていた。
「すごい騒ぎになってしまったな。」
「ええ、でもなんだかたのしいです。」
「君もそう思うかね?」
「はい。」
警官たちは、町長と町役場の人の話を聞きながら、
ぐるぐると美術館のまわりを囲んでいた。
そのさらに外では、町民たちが宴会をしている。
「そろそろ23時になるぞ!」
空気が張り詰め、しーんとした空気が流れた。
一分経ち、二分経ち、五分がすぎた頃。
「もしかして、怪盗なんて来ないんじゃないか?」
と、町民たちの一人が言い出した。
すっかりしらけた空気が流れ、
町民たちはぞろぞろとそれぞれの家に帰っていった。
30分がすぎた頃には、警官たちもすっかり気を緩めていた。
「町長、どうやらいたずらだったようですね。」
「そのようです。ご迷惑をおかけしました。」
「いえいえ、何事もなくて良かった。」
町長は美術館の方を振り向くと、がっかりした様子で、
「本当にそうだったのかなぁ?」
とつぶやいた。

次の日の朝、町長の机の上に一枚の手紙が届いていた。
封筒を開けると、中には一枚の紙切れにこう書かれていた。

『きみたち町民のわくわくした心はいただいた。 怪盗より』

それから毎年この町では、この日を怪盗記念日にした。
怪盗は来なくても、毎年祭を開いてたのしむようになったそうだ。
予告状と手紙は、今でも町の宝として保管されている。
ラベル:小説
posted by どらっくす at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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