ちゃんぷる〜日記。

どうせ誰も読んでない。

2023年04月03日

重み

「君を愛しています。」
彼はすぐにそんなことを言う。
そんな時、私は何も言えなくて、なんとなく笑顔を作るだけだ。
それでいつもは終わり。
ただ、今日の彼は違った。
「どうして、愛していると言ってくれないのでしょうか?」
言いづらいのだけど、彼に隠し事をしたくなかった。
「あなたに愛していると言われる度に、なにか心の奥に重いものがこみあげてくるのです。」
私の中に、彼の重みが加わったかのように、心が重くなる。
人に愛されるということが、こんなにも苦しみを生むものだとは知らなかった。
愛されれば愛されるほどに、愛されているのかと私自身が叫び出す。
この重みが、ただ言葉によってのみ生みだされているのか。
あるいは、もっと別な。
「そうでしょうか?」
彼の声に、私の思考は中断された。
「そうでしょうか、とは?」
「僕には、愛の重みがわからないのです。」
「重みがわからない?」
「ええ。」
彼の瞳の奥に、とてつもない怪物が潜んでいる気がした。
愛の重みがわからない人間が、どうして人を愛することができるというのか。
愛しているという言葉は、さらに私の心の中で動き出す。
はたして、この言葉は本当にわたし自身を指す言葉なのだろうか。
もっと別な。
「つまり、愛とはもっと軽いものだと思うのです。」
私の思考は、またも彼の言葉で止められた。
「軽くはないでしょう。」
「むしろ僕にとって、愛とはもっとも軽やかな感情なのです。」
「へえ。」
あまりにも間抜けな声が出たことに自分自身で驚いた。
「覚えてはいませんが、きっと人間が生まれた時に、最初に愛を感じるのではないかと思うのです。」
「それはそうかもしれません。」
「だったら、そこに重みなんてものがあるのでしょうか?」
「どうでしょう。」
私には、わからなかった。
愛とは、あなたとわたしの間に架かる橋のようなもので、二人で支えていくものなのではないだろうか。
「僕は、君を愛していると感じる時、空だって飛べるような気がするのです。」
彼が空を飛んでいるから、私は橋に潰されそうになっているのではないだろうか。
なんともズルい話だ。
「その時、私はあなたの愛を下から支えているのです。だから、重いのです。」
彼は一瞬悩んだような顔をしてから、パッと顔を輝かせた。
「それなら、一緒に飛びましょう。」
「飛ぶ?そんなことをしたら、あなたは落ちてしまうかもしれないですよ。」
「その時は、その時です。でも。」
彼は笑った。
「でも?」
「きっと大丈夫です。君は僕の天使ですから。」
彼の背中に羽はない。私の背中にも羽はない。
それでも空を飛べるだろうか。
「私は、あなたを愛しています。」
彼は空に飛んでいった。
「僕も、君を愛しています。」
私もどうやら体が浮いてきた。
私を潰そうと落ちてきた橋は、そのまま地の底に落ちていく。
彼と手を取り合い、どこまでも空を飛ぶ。
空を飛ぶのは、思っていたよりも、気持ち良いものだった。
posted by どらっくす at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
最近の記事
タグクラウド





PR
漫画・コミック全巻読むなら【全巻読破.COM】

歯の美白

ロリポプラン 詳細はこちら





人気ブログランキングへ

カテゴリ
ブログパーツ