どらっくすのちゃんぷる〜日記。

どうせ誰も読んでない。

2019年01月20日

ぼんじり。

ぼんじりってなんだろう?
なんだろうね。
ぼんじりというだけあってしりだろうね。
なるほど。
しりだからしりたいのか。
そういうことだね。
やきとりなのかね。
そうともきくね。
じりはしりだとして、ぼんはなにかね?
ぼんはぼんでしょ。
おぼんってこと?
ボーンつまりほねさ。
ほねか。
ちぢまってぼんさ。
するとぼんじりはほねなのかな?
そうなるだろうね。
なるほど、そうなのか。
よのなかはふしぎなことがおおいね。
まったくだ。
たとえばさ。
なんだい?
ぼんじりってなんだろうね?
しらない。
posted by どらっくす at 03:17| Comment(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月29日

無苦な人。

不思議な人に出会った。
「僕は生まれつき苦しみを感じないんだ」
「へえ、それは羨ましい」
「よく言われるよ」
彼は無表情だった。
私はと言ったら苦しみまみれで、今すぐにでも死んでしまいたいのに、彼には到底わからないことなのだろう。
「君はいま苦しんでいるのかい?」
「え?」
「そういう顔をしているよ」
私は言い当てられた動揺を隠しきれなかった。
「私は……死にたい」
「へえ、それは羨ましい」
「どうして?苦しくて死にたいほどなのに」
「僕は苦しみを感じたことがないからね」
なんだかむかついてきた。
彼に苦しみはないのかもしれない。
でも、私は苦しみに苦しんでいるのだ。
少しぐらい同情してくれたって良いじゃないか。
私は彼の首を絞めた。両手にこれ以上ないくらい力を込めた。
彼の顔は次第に紅潮したが、無表情のままだった。
なんだか力が抜けてしまった。
彼は少し喉を抑えて、呼吸を整えた。
「息苦しいというのとは、ちょっと違うんじゃないかな」
彼の目が恐ろしかった。特段攻めている様子もない。何もない。
真っ暗だ。
「苦しみを教えてくれようとしたのはありがたいけど」
「死ぬとは思わなかったの?」
「思ったけど、苦しくはなかったよ」
「死ぬのが怖くないの?」
「いつかはみんな死ぬじゃないか、まったく怖くないわけではないけど」
「怖いと苦しいは違うの?」
「違うんじゃないのかな」
「あなたは生きているの死んでいるの?」
「生きているよ」
「じゃあ苦しみなさいよ、少しは」
「それが無理なんだよ」
いっそロボットであれば良い。
だが彼は人間だった。おおよそ人間らしくないが人間であることは間違いなかった。
「帰ります」
私はこれ以上この場にいることができなかった。早く逃げ出したかった。
「ああ、そう」
「はい」
「また来てくれるとうれしいよ」
私は何も答えなかった。
ここへ来ることは二度とないだろう。
願わくば彼に最初の苦しみを与えたのが私であって欲しい。
posted by どらっくす at 10:41| Comment(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月27日

魔法。

魔法というものがあるのであれば、今すぐに願いを叶えて欲しい。
その願いがどんなものであるか、まずはそこから教えて欲しい。
「なぜ?」
彼女は遥か彼方から僕を見る。
僕はただ考える。いったいなぜなのか。
「なぜ?」
彼女の顔はわずか数センチまで近づいている。なのに瞳は遥か彼方から見つめたままだ。
僕は少しも近づくことができなかった。
「君に少しでも近づきたい」
僕が願いを言うと、彼女は笑った。
「こんなにそばにいるのに」
「でも遠い」
僕は彼女をもう一度しっかりと見た。
体はすぐそばにあるのに、彼女の存在はずいぶんと遠く感じる。瞳の中に映っているはずの僕は空の星と変わらぬほどに小さかった。
「こんなにも遠い」
彼女が僕を抱きしめる。
僕と彼女の体温が重なったところだけ、やけに熱くなった。
太陽が僕らの体を繋いでいた。
熱く熱く、溶けるほどに熱い。
「少しは近づいた?」
彼女は笑う、僕も笑う。
熱さはさらに増していき破裂寸前だ。
にも関わらず、僕らの距離は縮まらない。
ただ宇宙だけが存在していた。
posted by どらっくす at 10:35| Comment(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月23日

無題

解像度の荒い写真が一枚。誰を写すでもなく。
だが動いている。軒下の猫の姿だけがスッと消えた。
「あれ?しっかりととらえたはずなのに」
ケンヂはひとりごちた。
「そこには誰もおらぬよ」
声はする。姿は見えぬ。
「神様かい?」
「いかにも」
空は暗く、そして青い。深く深く青さを増す。
軒下に猫一匹。ケンヂはまたカメラを構えた。
明日が晴れるのかどうか、それだけが心配だったのだ。
眉間にしわ寄せて、もう一度猫を撮る。
猫はまたヒラリと身をかわす。軒下は暗く何も見えない。
誰もいない軒下。
ケンヂは身動きすることできずにカメラを置いた。置かれたカメラからほとばしる光が暗がりを照らす。
解像度の荒い写真が一枚ヒラリと宙を舞う。
猫だ、猫だ、猫だ。
軽薄な毛並みを撫でると尻尾が揺れる。
軒下はひどく濡れていたのでケンヂはもうびっしょりであった。
太陽がケンヂの服を乾かそうとするのを神はぼーっと見ていた。
「もう冬も終わりか」
神の言葉は冬将軍の耳に届いたのだろうか。
猫がみゃあと鳴く。
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2017年01月17日

A。

友人のAがどうしても書けぬというので、それならば書くことなどやめてしまえと言った。どうにも書けぬのに書こうとすることがおかしいので、書けぬなら書けぬままにしておかなければならない。それができないのであれば書くなどということは諦めた方が良い。
するとAは「農家が野菜が取れぬからと農家をやめるかね」などという。「やめることもあるだろうね」というと黙った。
「もしやめるにしてもまったくの廃業というわけにはいかない。やめるなら死ぬしかないだろう」
「どうも君は小説的にものを考えすぎているよ。できぬなら別を探すまでだろう」
Aはまたふむと言ったきり黙った。
書けないのなら書けないと開き直る。これができないから彼は悩んでいるのだろう。だからといって悩むひまがあるのであれば一文字でも何か書けば良いのだ。こんなところでふむと言ったきり黙っているところを見ると、書けぬと言いたいだけであり、気にするほどのことでもないのだろう。
「農家は野菜が取れないときは自分のせいだと思うかね?」
Aがまた口を開いた。
「思わんだろうね」
「うん、つまりは私が書けないというのも同じなんだ」
「というと」
「だから書けないのは私が悪いというわけではない。様々な要因があって書けぬのであって、それは野菜がうまく育たないのと同じ」
「なるほど」
「ようやく心が安らいだ。君に話すと考えがまとまるよ。じゃあ私は帰って寝る」
「それはよかった」
Aは嬉しそうにわたしの部屋を出ていった。それがはっきりとAを見た最後だった。行方知れずだ。
心当たりを訪ねてみたが、結局居所はわからなかった。死んだわけではないだろうが、姿を現さぬのか、それとも現すことができぬのか。いずれにせよ彼の身を案じ、夜もよく眠れなくなった。眠れなくなると体調を崩すのだから人体はよくできている。わたしは布団から起き上がることもままならぬほどに弱ったが、それでも眠りは浅いままだった。
わたしはそれでもAの来るのを待っていた。Aはわたしを頼ってくれていたが、わたしもAを頼っていたのだ。むしろわたしの方がAを頼りにしていたのかもしれない。時折Aの幻覚を見るようになった。
だからその時も、おそらく幻覚だったのだろう。Aの幻覚はわたしを見下ろしていた。
「ずいぶん弱っちまったね」
「ああ、また君かい」
「またって、ずいぶんと久しぶりだよ」
「そうだったか」
「お前が弱ってるんじゃしょうがない、今日は帰るとするよ」
「まだいていいよ」
「まあそうもいかない事情もある」
わたしの意識ははっきりとしなかった。妙に現実味のある幻覚なのか、あるいは本当にAがそこにいるのか。思い出そうとしても思い出せない。
「いいかい、お前が弱ってたらオレは困るよ」
「そういってもらえるとうれしいよ」
「オレが弱ったときにお前はいつだって話を聞いてくれた。だがお前が弱ったときにオレは何も聞かないよ」
「そういう間柄だね」
「ああ、元気な時にお前に話すことなんてないし。弱ってるお前の姿は見たくない」
「わがままなやつだ」
「話したら元気が出たよ。やっぱりお前に話すのが一番だ」
わたしはもしかしたら本当にAが来ているのではないかと思い意識を奮い立たせた。だが部屋の中には誰もいなかった。ほんの少しだけ外の匂いがしたような気がした。
その日からわたしの体は回復していった。幻か現実かはわからないが、わたしが病気をしていたらAが困るのだ。そう思ったら寝ていられなかった。
ひとつ気になることもあった。もしあのAが本物のAなら、わたしに何を話に来たのだろう。また何も書けぬと泣き言を言いに来たのだろうか。次に来た時に聞けば良い。とにかく体を治すことだ。
その後わたしは数十年を生きた。Aがわたしを訪ねてくることはなかった。行方もわからなかった。訪ねてこなかったところをみると、きっと弱ることなく幸せに暮らしたのだろう。わたしは大きく息を吐き、目をつぶった。
「ずいぶんと困ったことになったよ」
「へえ」
「もしかしたら地獄行きだ」
「案外良いところかもしれないよ」
「そうかねえ」
「そうさ」
「お前は天国行きだろうね」
「どうだか」
「久しぶりに弱っちまったよ。どうしたもんか」
「気が済むまで話してくれたらいい。どうせ時間はたっぷりある」



毎度毎度、書く段階になって書くことがないなあなどと困ってしまう。困るぐらいなら書かなくても良いのだろうけど、それはそれでなんだか気になる。それで結局なんだか書いてしまうのだから、そういうものなんだと思うしかない。
きっと書くことっていうのは、その辺に転がっていて。時間が来るとたまたま出てくるようなものなのだろう。人間がいなくても野菜は育つし、人間がいなくても物語は生まれる。
posted by どらっくす at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月16日

USBケーブル。

「USBケーブルがない」
ゲームコントローラーの充電が切れたのでUSBで充電しようとしたのだが、どうにも見つからない。よくよく思い出してみると、少し前に部屋の片づけをしたときに捨てたような気がする。
「なにがときめきで断捨離だ」
自分で捨てたのだが人のせいにしたくなる。いるものを捨てて、いらぬものを残すのが世の常とはいえ、人に言われてその気になって捨てたなどというのはバカらしい。特に本を読んだだけの時などはそのように思う。土台、本だけで人間が変わろうなどというのは無理な話なのだ。捨てれば得るものがあるなんていうのはまやかしであって、捨てたものはただ捨てただけ。入る余地がなければ入らないなどというが、今までの人生ではたして入る余地がないほどに何かに追い込まれたことがあっただろうか。物を捨てられぬことなどたいしたことではなかったのだ。大事なのは、捨てようが捨てまいが、自分の意思で決めたと生涯に渡って確信することなのである。
一時の熱情に浮かされてしまえば判断を誤る。部屋が片付かないことなどたいしたことではない。大事なことは捨てないと入って来ないのが本当だとしても、捨てたものはもう戻ってこない。だいたい野生の動物が物を捨てるか?捨てるどころか無駄なものを持たないだろう。つまりは、人間らしさというのはごみ溜めのような部屋の中に住むことと同じなのだ。
ひとしきり心の中で悪態をついたところで、わたしは大型家電屋にUSBケーブルを買いに行った。どうしても今ゲームがしたかった。いかに現代の通販サイトの配達が早いと言っても、わたしの足で買いに行くより早いことはない。
だいたいUSBというやつもおかしい。どんどん規格が変わりやがる。USBケーブルの一本も部屋の中に落ちていないわけではないのだ。むしろ過剰なほどにUSBケーブルはある。にもかかわらず端子が違って刺さらないのだ。2.0だ、3.0だはまだ良いが、B端子だのを考えたやつはどうしてそんなことをしたのか。あげくの果てにはミニとマイクロで違うときた。そんなに小さくしなくて良いから一本でどれでも使える方に技術を使え。
大型家電屋に着くとたくさんのUSBケーブルが置いてあった。
こんなにたくさんあって、どれがどれだか本気で理解している人間が世の中にどれだけいるのだろうか。専用ケーブルが多少高くても売れるのは選ぶのが面倒だからだろうが、選ぶのが面倒なのは売るためなのだろう。まったく頭がおかしい人間しかいないのだ。
だが、わたしの頭はおかしいなりにも多少はスマートなので、USBケーブルを選ぶのに迷うことはなかった。
マイクロだ。欲しいのはマイクロ。フェライトコア付き?なんだこれは?ノイズ低減?こっちにしておくか。ノイズ低減されるならほかのにも刺せるようにいくつか買っておこう。在庫がない?通販で買うからよろしい。
家にたどり着き、変えられるものはすべてフェライトコア付きのUSBに変えた。足りない分は明日には届くだろう。ノイズが減ったかどうかはわからないが、いらないUSBケーブルが増えたのは確かだった。
「断捨離……」
USBケーブルなど捨てても困るはずはないが、今日捨てるのはやめておこう。たかがケーブルじゃないか、どうしようもなくなったらチョウチョ結びにでもして玄関のドアに飾ろう。



USBケーブルのめんどくささといったら。ここ最近は、2.0を3.0に変えているところだったんですが、3.1とかもあったりして追いつける気がしません。
誰か僕の頭にUSBケーブルですべてのデータを入れ込んでください。1.0のゆっくりなスピードで良いから。
posted by どらっくす at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月13日

書かぬ。

本当はもう書きたくないものを書いているのかもしれぬ。そうはいっても書くことをやめるわけでもない。限界というのはどこに作るものなのかはわからないが、少なくとも自分が書けぬと思ったところに限界を置いてしまっては書けるようにはならない。むしろ書けないと思うことこそが、書くために必要なものであるのかもしれない。
はたして書くとはいかなるものなのか。まったくもってわからぬものである。
何も書けぬ小説家などという人間がいたとして、それはただの役立たずではなかろうか。
「いえ、違うのです。書けぬわけではないのです。書かないだけなのです」
生涯に渡って、書かぬ小説家を貫いた男がいた。名はここでは仮にT氏としておこう。T氏はとにかく何も書かなかった。そればかりか読むこともしなかった。人間社会の端の方で膝を抱えて座っているような人間であった。にもかかわらず、小説家であるということだけは譲らなかった。生涯において、一つの著作も残してはいないが、彼はずっと小説家であった。
「書かなくてもいいよ。口で言って聞かせてくれないか?」
用意した原稿用紙を脇に置き、わたしはずいぶんと妥協して、T氏の物語をこの世に解き放とうとした。T氏が本当に小説家なのかどうかを決めようとまでは思わなかったが、物語の一つもすらすらと出てこないようではわたしが彼を小説家として認める必要はないだろうと考えた。
「嫌です」
T氏の答えは簡潔であった。そうしてそれ以上は踏み込ませないという決意がにじみ出ていた。わたしは後に続ける言葉もなく、そしてまたT氏を小説家否かを判断することもできなかった。判断できないのであれば、小説家として扱ったとしても不都合はなかった。何も書かないT氏をただのクズであると断じるものもあり、それに対する憐憫とそれらのものとは違うものでありたいという反発心もあったのかもしれない。
それからわたしはT氏を小説家として扱うことにした。そう思って改めてT氏を見ると、どこか小説家のように見えてくるのだから不思議だ。飯を食う所作ひとつを取ってもどこか小説家めいている。
わたしはどうしてもT氏の小説を読んでみたくなった。
「Tさん、お願いですからあなたの書いた小説を見せてください」
「私は書かないのです。書かないからこそ小説家でいられる」
「つまらぬものでもよいのです。ごく短いものでも構わない」
「どんなものであれ書きません。でもひとつ教えます」
「なんですか?」
「文字の羅列に物語はやどりません。日常の中にこそ、物語はやどるのです」
なんだかもっともらしいことを言って煙に巻かれた気分になった。だが、T氏の行動はどうにも小説家らしかったのだから妙に納得もしたのだった。その教えがT氏が最後に残した作品だったのか。あるいは自分の死を悟っていたがゆえの教えだったのか。ちょうど一週間後にT氏は亡くなった。
普段と何の変りもなく寝床につき、朝起きてこなかったそうだ。奥さんは「ゆったりした人ですから、つい起きるのを忘れたのかもしれません」と言って笑っていた。瞳の奥の悲しみが笑いの底に広がり続けていた。だが涙を流すことはなかった。
わたしも涙を流さなかった。T氏の死を受け入れはしたが、それでもどこか生きているような気がした。現に今もT氏の声を聞いたような気がする。振り返っても誰もいない、目の前にも誰もいない。気配も感じない。T氏は死んだ。だが、本当にT氏は死んでしまったのだろうか。わたしは布団の中でT氏の小説がどんなだったかを想像する。もっと強く書くように頼むべきだったかもしれない。
「私は書かないよ」
T氏の声がまた聞こえたような気がした。わたしは目を開ける、部屋は暗く、誰もいない。再び目をつぶる。わたしはこのまま寝て、明日の朝起きることができるのだろうか。
わたしは明かりをつけ、机に向かうと、T氏のために買った原稿用紙に何事か書き出していた。



書けないと思っても、意外と何か書けたりするもので。そういうときは不思議な気もするのだけど、当然というような気もする。
そろそろ書いたものをまとめるのも良いかもしれない。まとめるのはまとめるので、おもしろいだろうと思うから。
posted by どらっくす at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月11日

きおく。

風が冷たくなったきたのはいつごろからだろうか。数日前か、あるいは数か月前か。
記憶が混濁しているのかもしれない、調整しなおさなくてはならない。
「明日の朝食は何にする?」
女が声をかけてきた。名前が思い出せないところをみると母親ではなさそうだ。
「クロワッサン」
女の名を思い出す必要はなかった。どうせこの記憶もすぐになくなる。
人が記憶を操りだしてからどれくらいの月日が経ったのか、もはやわかる人間はいない。記憶を操ることができるというのは真実を失うということでもあった。記録すらももはや信じられない。信じられるものをなくした人間たちは、争うことすらもやめたのだった。
「君は誰だったかな?」
「それに何の意味があるの?」
自分自身の存在すらも無意味であり、信じられるものは今だけだった。
明日の朝に、わたしはクロワッサンを食べるのだろうか?それとも別のものを食べるのか。
はたして出てきたクロワッサンは、わたしが食べたいと思ったものなのだろうか。
今、わたしが考えていることは、はたして本当にわたしが考えていることなのか。
そもそもわたしが存在しているのだろうか。
記憶を操ることができるようになり、人類はより発展し、世界は平和になった。だが、平和と引き換えに、わたしたちはわたしを消してしまったのだ。



序盤を書き出した時点で、ちょっと大きな話になりそうな予感がしたので早めに畳んでしまった。
暖かくなったり、寒くなったり、いったい気温の何を信じたら良いものやら。
記憶ってあいまいなものだけど、ぜんぶ操れるようになったら何を信じたら良いのかわからなくなりそうですね。
どこが最初に操りだしたところなのかわかっていないといけないけど、その最初自体がすでに操られている可能性もあるわけですし。
なんてことを考えていたら、今自分自身が考えていることだって怪しいものだということに気がつきました。
自分が本当に自分なのか、連続しているかどうかはわからない。
世界が全部偽物だとしても、やっていきたいことをやるしかない。
posted by どらっくす at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月08日

まるい。

まるいものがすき。
なのでボールがすき。コロコロ転がして遊ぶ。どこまでも転がして遊ぶ。
世界の端まで転がしたら、落っこちてしまう。でもボールにつかまれば、海の上でも浮くから安心。
真夜中になったらなにも見えない。ただ暗いだけ。ボールも見えないから、暗くなったら寝る。
朝がくるのがすき。
太陽はまるいからすき。
今日がはじまったら、世界の端までいこう。ボールにつかまって、太陽のもとまでいこう。
空気をたくさん入れたら、ぷかぷかと飛んでいった。
わたしの目玉ぐるぐると、目を回して倒れた。ボールは空に浮いたまま、じっと私をみている。
まぶしくて目を閉じたら、瞼の裏に太陽。焼き付いて離れないから、今日は夜がこないね。


..................
また思いつくままに。
もしかしたら一日に一度くらいやってもいいかもしれいな。
すごく頭がすっきりとする。
posted by どらっくす at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月07日

鼻歌。

まさかそんなところに人がいるとは思わなかった。
鼻歌を歌いながら歩いていた。前にも後ろにも誰もいなかったからだ。鼻歌を歌っていると気分が良い、特に気分の良くない時には。
理不尽な怒られ方をしたとき、相手を殺す代わりに帰り道で鼻歌を歌う。なんとも平和的ではないか。
にも関わらず、そんな平和的な時間を邪魔されてしまった。
「たのしそうだね」
物陰からいきなり男が現れた。しかも声をかけてきたのだから驚いた。鼻歌を歌っている人間に声をかけるなんてマナー違反にもほどがある。
僕は聞かなかったことにして通り過ぎようとした。男はたばこの煙を吐いていた。たばこの煙は最も嫌いなものの一つだ。
だが、おかしい。たばこの煙の臭いがしたら、僕の鼻は嗅ぎ分ける。あの臭いを嗅ぎ逃すなんてことはありえなかった。男の手元を見ると、たばこのようなものを持ってはいた。
「ああ、これ?加熱式たばこっていうらしい」
視線を向けただけで答えてくれるとは怪しすぎる男だ。なぜこんなにも話しかけてくるのか。
意味もなく少しだけ頭を下げて、男の横を通り過ぎようとしたが道を塞がれた。
「縁っていうのは不思議だよな」
いきなり変なことを言い出す男だ。
「今、何してるの?」
何も答えない。答える義理もない。
「まあいいや。実は困ってるんだ」
「はあ」
悪い癖である。困っていると言われるとなんとなく見捨ててはおけないのだ。こんなにも怪しい男など無視して、とっとと帰るべきなのに。
「電車に乗ろうと思ったんだけど、終電が終わっててね。タクシーで帰るにもお金が足りなくて」
「大変ですね」
「いくらか貸してもらえないかな。必ず返すから」
「え?」
いくらなんでも唐突すぎる。新手のかつあげなのだろうか。人に金を貸すときはあげるつもりで貸せ、なんてことはよく言うけど、見ず知らずの人に貸すなんていうのはあげるのと同じではないか。
「いや、それはちょっと」
「無理?」
「はい」
「なんで?」
なんで?とはまたずうずうしい男である。怪しい上にずうずうしいとまでくると、もはや一時も相手をしたくはないのだが、心のどこかで本当に困っている人だったら悪いという気持ちもあるのだ。つくづく人が良すぎるのかもしれない。
「あまり手持ちがないので」
「じゃあ五百円、五百円で良いから」
スッと思考が落ち着いた。この男は困っていない。ただ、ちょっと小銭を稼ごうというだけなのだ。五百円でタクシーに乗ってどこまで行こうというのだ。歩け。
僕は冷静になった頭で、この男がどうしたらいなくなってくれるかを考えた。そして考えた中で一番簡単な方法を選ぶことにした。
「駅に交番がありますから、そこで借りてください」
「え?」
「最近は借りられるらしいですよ」
「交番で借りたら返さなきゃでしょ」
そりゃそうである。むしろお前は僕から借りたら返さないつもりだったのか。いやわかってはいたけど、改めて事実を見せつけられると、自分の人の良さは長所ではなく欠点なのではないかと思えてくる。なぜ一瞬でも困った人かもしれないなどと勘違いしたのか。
「僕から借りても返さなきゃですよ」
「そりゃもちろん。必ず返すよ」
「どうやって?」
男はしばらく考えていた。住所を教えろとか、電話番号を教えろとか、そんなことを言われればむしろこっちが困る。僕は男の横をすり抜けた。男は考えながらも後をつけてきた。怖い。
「ついてこないでもらえますか」
「いや、返すから貸してくれよ」
「返すって、返す方法なんてないでしょ?」
「うん、だからまあなんだ。人の縁ってのは不思議なもんだよな」
「とにかく貸せません」
再び歩き出す。今度は男もついてこなかった。なんとなくこちらの様子をうかがいながら僕とは反対方向に歩き出したようだった。十分に離れてから僕はちらりと男の方を振り返った。男は待ってましたとばかりに大声で「ケチー!!」と叫んできた。
僕がケチならお前はなんなんだ?詐欺師か、恐喝か、とにかく犯罪者の類であることには間違いないんだぞ。五百円なんていう子どもでも持ってるような金額だからって、罪じゃなくなるわけじゃないんだ。こんなに嫌な気持ちにさせて、その上ケチだって?ああケチだよ。ケチで結構。このまま警察に行ってやろうかな。まあでもめんどうだし、どうせいなくなってるだろうし。逆恨みされても嫌だしな。というようなことを考えながら、僕は鼻歌を歌いだした。
きっとすべてを消し去ってくれる。全部が歌と一緒に鼻から出ていってくれる。誰に何を言われたとしても、今度は歌い続ける。今夜はやけにイライラしたけど、鼻歌の調子は良いのが救いだった。



なさそうでこんなこともあるかもしれません。
アイコスで吸ってる人が物陰にいると気がつかなくてびっくりしますね。煙だけ、もくもく出てるのに臭いがしない。
posted by どらっくす at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月05日

メガネ。

メガネがあるよ。メガネがあるよ。
母さんメガネ父さんメガネに囲まれて、小さい小さいメガネがあるよ。
メガネがないなら困ってしまう。見えないものがたくさんできる。
メガネがないなら得してしまう。見えないものがたくさんできる。
小さい小さいメガネが言うよ。
大きい大きいメガネはあるの?
父さんメガネが答えてくれた。
大きい大きいメガネはあるよ。
大仏さまほど大きいのかな?
よっぽどよっぽど大きいよ。
お空の月より大きいのかな?
よっぽどよっぽど大きいよ。
いったいどれほど大きいのかな?
父さんメガネは考え言った。
世界のすべてを覆うほど。
そんなに大きいメガネがあるの?
世界を見るためいるのがメガネ、すべてを覆わにゃメガネと言えぬ。
あなたのメガネ、大きいメガネ、世界はメガネの向こうにあるよ。


小説というより詩みたいになってしまったけど、それはそれでよいと信じよう。
あけまして、おめでとうござ、います。
posted by どらっくす at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月03日

にくまん。

「本日の営業は終了いたしました」
スーパーはとっくに締まっており、営業終了を知らせる看板が立っていた。
こういうときはコンビニで買うしかない。ボクは来た道をさらに進んでコンビニを目指した。
ようやくコンビニの明かりが見えてきたと思いったが、妙に明るすぎる。
近づいてみると、コンビニに見えたのは宇宙船だった。
昨日まではコンビニだったはずなのに、疑問に思いながら近づいてみると自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませー」
いつものように店員の元気な声が響いてきた。ただ、その店員がなんというか、全員タコのような生物になっていた。
ボクは自分の頭がおかしくなったのではないかと一瞬疑ったが、おかしくなっていたとしても、もうこれだけおかしくなってしまっていたら、かえっておかしくなったことにも気が付けないだろうということに思い当り考えるのをやめた。
店内を巡ってもめぼしいものがなかったのでおでんを買って帰ることにした。
だが、無情にもおでんは加温中になっていた。
「すいません、おでんまだですか?」
「あっ、まだ温めてるんですよ。」
待ってもよかったのだけど、さすがにこの奇妙な店に長居するのも気持ちが悪く、にくまんをひとつ頼んだ。
「ありがとうございましたー」
自動ドアを出て、後ろを振り返ってみても、まだコンビニは宇宙船のままで、店員たちは相変わらずタコだった。
きっと疲れているのだろうと思い、その日はかえってすぐに寝た。朝起きてから冷めたにくまんを食べながら昨日のことを思い出す。
幻覚だろうな。
そんなことを一日思いながら過ごし、帰りにコンビニによると、昨日とはまた少し形の違った宇宙船が止まっていた。昨日の宇宙船が円盤型だとしたら、今日のは葉巻型だった。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが開くと、中に待っていたのは頭が大きく目玉も大きく、それでいて体は小さく、真っ白い。いわゆるグレイと言われるような宇宙人だった。
ボクの頭は本格的に狂ってしまったのだろう。
こんなに何度も宇宙船に乗りこむなんて、しかも宇宙船の中はコンビニなのだ。
何がなんだかわからぬままにくまんだけを買って帰った。
店を出て、何度振り返っても宇宙船はそこにあった。
それから何日もコンビニに通ってみたが、毎日宇宙船だった。もはや大体の形の宇宙船は見てしまったのではないだろうか。
もしかしたら、経営者が宇宙人なのかもしれない。
いっそ今日は尋ねてみたらどうだろうか。そう決心して、またコンビニに行った。
「いらっしゃいませー」
「あの、すいません」
「はい?」
「このコンビニのオーナーって宇宙人ですか?」
「は?いや、違うと思いますけど」
「君は何星から来たの?」
「え、地球っす」
「またまたー」
なにしろこいつはタコなのである。どこからどうみてもタコ型の宇宙人。しらばっくれるのもいい加減にしろ。
「なんかわからないですけど、警察呼びますよ?」
ボクは彼らを追及することを諦めた。宇宙警察を呼ばれるとこっちも都合が悪い。
「わかった、今日のところは退散するよ。あっ、にくまんひとつ」
「ありがとうございましたー」
自動ドアを出る直前、店員が別の店員になにやら話しかけた。
きっと宇宙人であることがばれたことを相談しているのだろうと思ったが、聞き耳を立ててみたら「にくまん野郎が頭おかしいこと言ってきた」という内容だった。
たしかににくまんしか買ってないけど、にくまん野郎ってあだ名はひどいだろう。



いったいどうしてこういう内容になったのか、皆目見当がつかない。
自然の流れに任せていたらこうなったのだけど、自然の流れでこうなってしまうのであれば、そもそも自然の流れ自体を疑う必要がありそうだ。
もしかしたら、宇宙人が脳に直接指令を送ってきたのかもしれない。
posted by どらっくす at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月02日

八太郎と十郎太。

八太郎という名前のタコがいました。
八太郎は名前のとおり足が八本、海の中では名の知れたタコでした。
なにしろ八本も足があるのですから、足の多さでほとんどの敵を倒すことができたのです。
そんな八太郎にも苦手な存在がいました。イカの十郎太です。
十郎太には、なんと十本も足があったのです。
八本の八太郎ですら太刀打ちできません。ただ十郎太はおとなしいイカだったので、八太郎は海の中ではおおいばりだったのです。
おおいばりの最中に十郎太が近くに来ると、少しだけ声をひそめましたが、十郎太がなにもしてこないとわかると、再びおおいばりとなったのです。

あるとき、海の中で大飢饉が起こりました。
食べ物が少なくなり、みんなお腹が空いていました。
そんな中でも八太郎はおおいばり。みんなに嫌われていました。
イカの十郎太が近づいてきたのに気がついても八太郎はもう恐れることもなくおおいばりです。
十郎太の姿を見て、八太郎はギョッとしました。
「お前、足はどうしたんだ」
「ちょっと怪我をしてしまってね」
こんな飢饉のときにバカなやつだと八太郎は思いました。
なにしろ十郎太と言ったら、自慢の十本足が七本になっていたのです。
本格的に八太郎は十郎太を恐れなくなりました。なにしろ自分よりも足が少なくなったのですから、なにも怖くありませんでした。
次の日も八太郎は十郎太に会いました。すると十郎太の足は六本になっていたのです。
「お前、足はどうしたんだ?」
「ちょっと怪我をしてしまってね」
日に日に十郎太の足の数が減っていき、ついには残りが一本になってしまいました。
いよいよもっておかしいと思った八太郎は、十郎太とよく一緒にいる亀の松さんのところを訪ねたのです。
「十郎太の足はどうしてあんなに減ったんだ」
「あいつは偉い奴だよ」
聞くと、十郎太は飢えて死にそうな小魚たちに、毎日足を一本あげていたのだそうです。
「それであんなに少なくなっていたのか」
「そうなんだよ」
亀の松さんにお礼を言うと、八太郎は急いで十郎太のもとに行きました。
十郎太は、最後の一本足を今まさに飢えた小魚たちにあげようとしていたところでした。
「えいえい、ちょっと待て」
「これは八太郎さん」
「十郎太の足はそれで最後だ、オレの足を食べなさい」
暴れん坊の八太郎の言葉に小魚たちは驚きました。一番驚いていたのは十郎太です。
「八さん、自慢の足じゃないか。一本だってやらなくていいよ」
「そしたら明日からはどうするんだ?こいつらは死んじまうぞ」
「なに、そしたらこの身をやるさ。八さんはこの飢饉を終わらせるようがんばってくれ」
八太郎は十郎太の気持ちに心を打たれました。そして、よりいっそう十郎太を死なせるわけにはいかないと思ったのです。
「なら今日のところはオレの足を食ってもらおう。いや、今日から七日間はオレの足だ。それで残った足が一本ずつとなったところでまた考えよう」
「八さん……、よし一生懸命飢饉を終わらせる方法を考えよう」
二人は友情の涙を流しました。その涙は、海を伝って海神さまのところまで流れていきました。
それから数日が経ち、二人の足も一本ずつとなってしまいました。
「八さん、最後の一本。どっちが先に出すかい?」
「そのことなんだが」
八太郎は言うが早いか、自分の足をえいやと切り落としたのです。
小魚たちは喜んでタコの足を食べ始めました。
「八さん」
「十郎太、オレは今までずっと暴れん坊でやってきた嫌われ者だ。一度くらい誰かの役に立ってから死にたいんだ」
「だからって、そんな真似はよしてくれ。明日はオレが……」
「いや、十郎太。ここ数日、話してみてわかった。お前は頭が良い。この海を仕切れるのはお前だよ」
「八さん、みんな八さんがどんなに暴れたってついてきたじゃないか。そりゃ嫌いだって言う奴もいる、でも口だけさ。本当にこの海を仕切ることができるのは八さんだ」
二人はようやくお互いのことを理解しあい、おいおいと泣きはじめました。その涙は再び海神さまの元に届きました。
海神さまは二人の友情が本当であることを確信し、奇跡を起こしに二人のもとにやってきました。
「二人の涙が潮にのって流れてきた。お前たちの涙に免じて一つだけ願いを叶えてやる」
二人は声を揃えて言いました。
「それでは飢饉を終わらせてください」
海神さまは言いました。
「お前たちの体を治してやることもできるぞ」
「わたしたちはもう大丈夫です。なに、わたしの一本足でも二人の分の食料を取るくらいはできますよ」
「すまないな十郎太」
二人の間にできた絆は、二度と壊れることのないほどに強く結び付いていました。
「さあ、飢饉を終わらせてください」
「わかった」
海神さまがひとつ何か呪文をとなえると、あっという間に海の中に温かい空気が戻ってきました。きっとこれからは食料もたくさんとれるでしょう。
「ありがとうございます、海神さま」
「願いは叶えたぞ」
海神さまはまた海の奥底の方へと帰っていきました。
「ああよかった、これで海は救われた」
「ほんとうによかった。あれ?八太郎お前足が」
八太郎が自分の足を見ると、小さいながらも八本の足が生え出していました。
「十郎太、お前もだ」
十郎太にも残った一本足と九本の新しい足が生え出していました。
海神さまの奇跡のおかげで、二人の足がまた生えてきたのです。
それから二人は協力しあって、海の中を長い間治めていきました。
タコとイカの足が何度も生えてくるようになったのも、この出来事があってからなのだそうです。



昨日は短かったので、今日は長めにと決めていました。
一度保存をミスったときは冷や汗が出ましたが、データが残っていたので安心しました。危ないところだったぜ。
posted by どらっくす at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

八太郎と十郎太。

八太郎という名前のタコがいました。
八太郎は名前のとおり足が八本、海の中では名の知れたタコでした。
なにしろ八本も足があるのですから、足の多さでほとんどの敵を倒すことができたのです。
そんな八太郎にも苦手な存在がいました。イカの十郎太です。
十郎太には、なんと十本も足があったのです。
八本の八太郎ですら太刀打ちできません。ただ十郎太はおとなしいイカだったので、八太郎は海の中ではおおいばりだったのです。
おおいばりの最中に十郎太が近くに来ると、少しだけ声をひそめましたが、十郎太がなにもしてこないとわかると、再びおおいばりとなったのです。

あるとき、海の中で大飢饉が起こりました。
食べ物が少なくなり、みんなお腹が空いていました。
そんな中でも八太郎はおおいばり。みんなに嫌われていました。
イカの十郎太が近づいてきたのに気がついても八太郎はもう恐れることもなくおおいばりです。
十郎太の姿を見て、八太郎はギョッとしました。
「お前、足はどうしたんだ」
「ちょっと怪我をしてしまってね」
こんな飢饉のときにバカなやつだと八太郎は思いました。
なにしろ十郎太と言ったら、自慢の十本足が七本になっていたのです。
本格的に八太郎は十郎太を恐れなくなりました。なにしろ自分よりも足が少なくなったのですから、なにも怖くありませんでした。
次の日も八太郎は十郎太に会いました。すると十郎太の足は六本になっていたのです。
「お前、足はどうしたんだ?」
「ちょっと怪我をしてしまってね」
日に日に十郎太の足の数が減っていき、ついには残りが一本になってしまいました。
いよいよもっておかしいと思った八太郎は、十郎太とよく一緒にいる亀の松さんのところを訪ねたのです。
「十郎太の足はどうしてあんなに減ったんだ」
「あいつは偉い奴だよ」
聞くと、十郎太は飢えて死にそうな小魚たちに、毎日足を一本あげていたのだそうです。
「それであんなに少なくなっていたのか」
「そうなんだよ」
亀の松さんにお礼を言うと、八太郎は急いで十郎太のもとに行きました。
十郎太は、最後の一本足を今まさに飢えた小魚たちにあげようとしていたところでした。
「えいえい、ちょっと待て」
「これは八太郎さん」
「十郎太の足はそれで最後だ、オレの足を食べなさい」
暴れん坊の八太郎の言葉に小魚たちは驚きました。一番驚いていたのは十郎太です。
「八さん、自慢の足じゃないか。一本だってやらなくていいよ」
「そしたら明日からはどうするんだ?こいつらは死んじまうぞ」
「なに、そしたらこの身をやるさ。八さんはこの飢饉を終わらせるようがんばってくれ」
八太郎は十郎太の気持ちに心を打たれました。そして、よりいっそう十郎太を死なせるわけにはいかないと思ったのです。
「なら今日のところはオレの足を食ってもらおう。いや、今日から七日間はオレの足だ。それで残った足が一本ずつとなったところでまた考えよう」
「八さん……、よし一生懸命飢饉を終わらせる方法を考えよう」
二人は友情の涙を流しました。その涙は、海を伝って海神さまのところまで流れていきました。
それから数日が経ち、二人の足も一本ずつとなってしまいました。
「八さん、最後の一本。どっちが先に出すかい?」
「そのことなんだが」
八太郎は言うが早いか、自分の足をえいやと切り落としたのです。
小魚たちは喜んでタコの足を食べ始めました。
「八さん」
「十郎太、オレは今までずっと暴れん坊でやってきた嫌われ者だ。一度くらい誰かの役に立ってから死にたいんだ」
「だからって、そんな真似はよしてくれ。明日はオレが……」
「いや、十郎太。ここ数日、話してみてわかった。お前は頭が良い。この海を仕切れるのはお前だよ」
「八さん、みんな八さんがどんなに暴れたってついてきたじゃないか。そりゃ嫌いだって言う奴もいる、でも口だけさ。本当にこの海を仕切ることができるのは八さんだ」
二人はようやくお互いのことを理解しあい、おいおいと泣きはじめました。その涙は再び海神さまの元に届きました。
海神さまは二人の友情が本当であることを確信し、奇跡を起こしに二人のもとにやってきました。
「二人の涙が潮にのって流れてきた。お前たちの涙に免じて一つだけ願いを叶えてやる」
二人は声を揃えて言いました。
「それでは飢饉を終わらせてください」
海神さまは言いました。
「お前たちの体を治してやることもできるぞ」
「わたしたちはもう大丈夫です。なに、わたしの一本足でも二人の分の食料を取るくらいはできますよ」
「すまないな十郎太」
二人の間にできた絆は、二度と壊れることのないほどに強く結び付いていました。
「さあ、飢饉を終わらせてください」
「わかった」
海神さまがひとつ何か呪文をとなえると、あっという間に海の中に温かい空気が戻ってきました。きっとこれからは食料もたくさんとれるでしょう。
「ありがとうございます、海神さま」
「願いは叶えたぞ」
海神さまはまた海の奥底の方へと帰っていきました。
「ああよかった、これで海は救われた」
「ほんとうによかった。あれ?八太郎お前足が」
八太郎が自分の足を見ると、小さいながらも八本の足が生え出していました。
「十郎太、お前もだ」
十郎太にも残った一本足と九本の新しい足が生え出していました。
海神さまの奇跡のおかげで、二人の足がまた生えてきたのです。
それから二人は協力しあって、海の中を長い間治めていきました。
タコとイカの足が何度も生えてくるようになったのも、この出来事があってからなのだそうです。
posted by どらっくす at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月31日

男と坊主。

名前のない男がいた。
いつ生まれたのか、どこで生まれたのかもわからない、何も持たない男だった。
男は何かを得ようともしなかった。欲というものすらも、どこかに忘れてきてしまったようだった。
一日の大半を森の中の木の下ですごし、腹が減った時にだけ食事をしていた。
男は食事をすることに罪を感じていた。
何も欲しくはないのになぜ腹が減るのか。
腹が減ると、何かを食べずにはいられなかった。
食わねば死ぬ。
それが食べる理由になるのかはわからなかった。
男を訪ねてくる人があった。近くの寺の坊主であった。
男は坊主と話をするのが好きだった。言葉を教えてくれたのも坊主であった。木の下に座ることを教えてくれたのも坊主であった。男が人であることができたのも坊主のおかげである。
男は坊主に尋ねた。
「わたしはなぜ食べずにはいられないのでしょうか」
「答えはない」
「食べずにいたらどうなるのでしょうか」
「死ぬ」
「ならば死んでもいいのでしょうか」
「だめだ」
「なぜです」
「わたしが悲しい」
男は納得しかねていた。坊主を悲しませるのはいやだったが、死んでならぬ理由とは思えなかった。
男の顔を見て坊主は続けた。
「この世は、さまざまな調和としてできている。お前がいなくなることはできない」
「食べるのをやめることはできないということですか」
「食べたい気持ちがなくなったときが死ぬ時だ」
男は黙りこんだ。
「お前は自分が食べたくなっていると思い込んでいるが、世の中がお前に食べてもらいたいのだ」
「食べてもらいたい……」
「食すのが罪なのではない、食にとらわれるのが罪なのだ」
「食べたいときに食べることは、調和を調和として成り立たせているということですか」
「そうだ、世界は食べるものだけでも食べられるものだけでもない。両方なのだ」
男の体から罪の気配が薄らいでいった。
「ありがとうございます」
「わがままになってはいけない。すべては調和している」
「それでは先ほどのお前が死んだら悲しいというのはわがままではないのですか」
坊主は笑い出した。
「私もまだまだ修行が足りないな」
男は、自分が納得できなかった理由を知った。坊主の悲しみは道理から外れていたのだ。
「調和とは難しいものなのですね」
「そんなことはない。私はお前のように生きたいよ。お前は十分に調和と共にある」
「わたしは、あなたほど物を知りません」
「物を知るから、人は調和から離れていくのだ」
坊主と男を夕日が照らし、やがて沈んでいった。
坊主は男に別れを告げ、寺へと帰って行った。
森には深い闇が訪れた。
動物たちが森を支配しだすころ、夜の森の中に男の寝息がうっすらと聞こえていた。



大みそかですね。今年もありがとうございました。
posted by どらっくす at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月29日

あな。

「あなたはいったいどういうものが好きなんですか?」
急にそんなことを問われても、なんとも答えづらかった。
なにしろわたしにとっても初めてのことだったからして、すぐにどうこう言えるものではなかったのである。
「あなたのような美しい方に話すのは気がひけるのです」
などと、適当にごまかして、その場を逃れようとしていたのである。
だが、それでごまかされるような人間はこの場にはおらず、むしろ「こいつは人の秘密を握るだけ握って、自分のは話さないつもりではないか?」という疑惑の目を向けられてしまった。
このような場を作ったのは、ひと時の気の迷いであったという他ない。
気の迷いによってわたしは、人が好まざるものを好むものの会と名付けた会を開くことにした。
私自身は、特に秀でて好きというものはなかった。殊に人が好まざるものは大概にして嫌いであった。だが、そういうものを好む人がいるということ、そしてそういう人たちを目の当たりにしたいという好奇心がわいてしまったのだ。
そこで知り合いの作っている雑誌に小さく広告を出すことにした。広告と言ってもいわゆるペンフレンドの募集のようなもので、こんなことをしても誰も集まるはずがなかろうというものであった。
しかし、世の中には奇特な人間というものが幾人かいるようで、数人の人間が会に参加すると言ってきた。
わたしはしかたがなくとある喫茶店に個室を用意していただき、そこで会を開くことにしたのである。
わたしを含めて4人の人間がその場に集まった。
この人たちがいったいどのようなものを好むのか、わたしには見当もつかなかった。
まず一人目に話し出したのは齢40を過ぎたであろうご婦人だった。
「わたくし、実はよその人のものしか愛せませんの」
などと言うので、なるほど不倫の話かと思いきやそうではなかった。
「子供は5人、男が2人、女が3人いるのですけど、どの子供も嫌いでして。ただ主人がお手伝いに産ませた女の子だけを愛していますの」
「自分の子供には愛情を感じないのですか?」
「ええ、これっぽっちも」
「それで、その手伝いの女性というのはまだ雇っているんですか?」
「いいえ、すぐに首にして、娘だけ引き取りました。たっぷりと愛情を注いで育てていますの」
どうにも恐ろしい話である。自分の子供よりも、他人の子供が良いなどという母親。その母親の元に生まれた子供はもちろん、本来母親でない女性に愛情を注がれた娘がどれほど歪に育っていくのか。
そしてその母親自身も、そのことをおかしいと思っている。愛情が真に人を育てるものなのか、何年か後にまた話を聞きたいものである。
次は70歳は過ぎたであろう男性であった。
「わたしが好きなのはわかめでございます」
「わかめというと海藻の?」
「ええ、あのわかめです」
海藻が好きな人は大勢いるだろう。もちろん嫌いな人も多くはいるだろうが、取り立てておかしいというほどの趣味ではない。
「わかめを毎日食べているうちに物足りなくなりまして、自分で養殖するようになったのです」
老人は全員を見まわしてから話をつづけた。
「最近では育ったわかめを浴槽にいっぱい集めて、その中に浸かったりもしています」
「それはまた……」
「わたし自身、どこまで好きになるのかわかりません。いずれはわかめそのものになりたい」
恍惚とした表情で老人は話を終えた。余談になるが、この数週間後に、この老人のご家族から彼が亡くなったという連絡があった。死因を聞いてみると口ごもったので「わかめが関係あるのですか?」と聞いてみるとやはりそうだった。
老人は乾燥わかめを限界以上に食した後に、水の中に入り窒息死したそうだ。棺には花の代わりにわかめを敷き詰めたと言っていたから老人も満足な葬儀だったろう、いささか磯臭そうではあるが。
最後にここまで一言も発していない残りの男にも話を聞いたが返事はなかった。
おもむろに紙を取り出すと、そこになにやら書き、私に差し出した。
「私は喋らないのにこういった集まりに来ることを好む、と書かれていますね」
全員が男の方を見ても、何も喋らなかった。
「筆談はするのですか?」
できればしたくない。と書いてきた。
「理由があるのですか?」
自分の声が嫌いなのです。と書いてきた。
そう言われると聞きたくなるので、散々みんなで声を出させようとしたが男は黙ったままだった。そうして私たちの間に少し冷めた空気が流れたことすらも、どこか楽しんでいる様子だった。
「あなたはいったいどういうものが好きなんですか?」
突然、私に向かって婦人が言葉を投げかけてきた。
私は何度か逃れようとしたが、前の男が何も話さなかったこともあり、その上わたしまで話さないということは許されそうになかった。
さて私は弱ってしまった。本来なら男がやっていることというのは、私のやりたかったことに近い。
つまりは、悪趣味を笑うのが悪趣味ということにしたかった。
だが、すでに使われたものでは許してもらえないだろう。私はよりにもよって自分の趣味の中で一番くだらないものを選んで話し出してしまった。
「少し性的な話になるのです」
「聞かせて」
婦人の目が輝いた。どうもこのご婦人は刺激にも飢えているらしい。
「たいしたことではないかもしれませんが、わたしは豚鼻が好きなんです」
とたんに婦人の目に怒りと軽蔑が浮かんだ。
「豚鼻と言ってもぶひぶひと鳴らす方ではありません。器具を使って引っ張りあげるのです。その美しさといったらありませんよ」
「失礼させていただきます」
婦人が立ち上がったので、なんとなく場はお開きということになった。
男はにやつきながら握手を求めてから帰った。
老人は近づいてきて「わかるような気がするよ」と私の肩を叩いた。
「私もわかめに性的な興奮を覚えているのかもしれない」
「そういったこともあるかもしれません」
「さっきのご婦人の鼻も釣り上げてみたかったのかい?」
「もちろん。あれだけ穴が立派でしたら、よっぽど美しくなったでしょう」
「わたしは穴を広げるよりも埋めたくなるよ」
「その気持ちもわかるような気がします」
老人が帰っていくのを見届けて、わたしも家に帰ることにした。
それぞれが何かしらの穴をこの会によって埋めようとしていたのかもしれないが、わたしはその穴を広げることに快感を覚えていた。帰る直前の婦人の顔を思い出す。憤慨してはいたが目の奥にわずかな期待という穴が開いていたような気がする。
近いうちに彼女に開いた穴を、わたしは広げることになるかもしれない。



また一つ、自分の中の扉が開いた気がします。
わりとこういうものを書くのは好きかもしれない。
posted by どらっくす at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月28日

小ネタ。

セール
「セールで買いたいものがあるんだけど行っても良い?」
「良いですよ。どこですか?」
「遠くのお店で、アレがすごく安いらしくて」
「近くの店でも売ってますよ」
「でもセールじゃないでしょ」
「セールじゃないですけど、遠くの店に行くまでの料金を考えたら、近くで買った方が安いですよ」
「だからあなたに連れてってと頼んでるんじゃない」

リーク
「へっへっへ、このネタをばらされたらお前も終わりだ」
「やめてくれ、頼む!」
「いくらで買う?」
「いくらでも構わない、とにかくやめてくれ」
「じゃあ1億でどうだ?」
「1億?それは無理だ。払えない」
「じゃあ5千万」
「無理」
「いくらなら払えるんだ?」
「それなんだけどさ、よく考えてみると、その情報を流されたらオレは終わりじゃん?」
「ああ、だから払えって」
「でも払うって言ったところで、何千万も払っちゃったらどのみちオレは終わりなんだよ」
「そんなこと言わずに、少し稼げるように頑張りなよ」
「外から見る以上に、中はボロボロなんだって。そういう状況だから外にそんな情報が洩れてるわけだし」
「なるほど」
「つまりどっちにしろ終わりなら、払わない方が良いんじゃないかなって」
「ええ……」
「というわけで、悪いけど持って帰ってよ。流すなら流しても良いし」
「いや、そんなこと言わずに。払えるだけで良いんで払ってくださいよ」
「うーん、ギリまで頑張って、2万5千円かな」
「じゃあそれでお願いします」

クリーム
「このクリームめちゃくちゃ甘いね」
「うわ、ほんとだ。すごく甘い」
「ちょっとどうやって作ったのか教えてもらおう」
「すいません、このクリームの作り方を教えてください」
「企業秘密というやつです。教えられませんよ」
「そんな、なんでもしますから教えてください」
「そうですか……、じゃあうちで働いたらどうですか?」
「ええ?良いんですか?ラッキーだなあ」
「ラッキーじゃないですよ、もちろんただ働きですよ」
「でもクリームの作り方は教えてもらえるんでしょ?」
「もちろんです。早速今日から働いて貰えますか?」
「良いですよ。じゃあまずクリームの作り方から教えてください」

タクシー
「へいタクシー!」
「どちらまでですか?」
「あそこなんですけど、わかりますか?」
「わかるもなにも、私はあのあたりに住んでいますよ」
「そうですか、なら運転手さんが帰るときに教えてください。一緒に乗って帰りますから」

態度
「ばかやろう、危ないじゃねえか!」
「そっちこそばかやろう、なんだその態度は!」
「なんだとこのやろう!やるってのか!」
「上等だ!こっちへこい!」
「おまえがこっちにこい!」
「いやだよ、お前がいるのは地獄じゃねえか」
「オレだっていけるもんなら天国に行きたかったよ」



なんとなく小ネタを少し。
どうも体力がないですね。少し体力をつけねば。
posted by どらっくす at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月27日

何も出てこないとしても。

どう頑張っても出てこないときは出てこない。
あんまりひねり出そうとしていても出るものではないので、出ないときは出ないものなのだと受け入れるしかない。
受け入れたからといって、出るように努めることを放棄するわけではない。
ただ、出るかもしれないという期待を持たず、出てこないという事実を見つめた上でできることをしていく。
そのことが大事なのだと思う。
瞑想をしてみたり、運動をしてみたり、そういった一見関係がなさそうなことも、結果的にはよい結果に繋がることもある。
だが、だからといって結果を期待してやることには、私は反対である。
結果が出なかったとしても努めたという事実によって得るものがあるというのではない。
何も得るものがなかったとしても、何かをやるという行為そのものがすでに尊いのである。
だから結果が出ないことに焦ってはいけない。
先に何かがあることを期待せず、ただ一歩一歩進んでいく。
そうすることで開けてくるものが必ずあるものである。
それでは私はトイレに行く、何か開けてくれそうな気がするのだ。今度こそ。

posted by どらっくす at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月26日

寝る。

自分の限界を決めるのは、自分自身だという。
つまりここまでだと思わなければ、越えられる限界というのもある。
額から目の奥にかけてが熱い。そして喉にも違和感がある。
なるほど、私は風邪をひいているのかもしれない。
そんな自分が定めてしまっている限界はどこだろう?
もしかしたら、その限界は越えられるものかもしれない。
私は目をつぶって考える。
もしかしたら風邪をひいているということ自体が限界を定めているから起こっていることかもしれない。
だが、絶対に風邪をひかない人間などいるだろうか?
また、絶対に風邪をひかないものを人間と呼べるのだろうか?
風邪とはすなわち、体の正常な反応であって、それ自体に良いも悪いもない。
具合が悪ければ寝ていればいいし、良ければ起きていればいい。
風邪とはその程度のものなのだ。
よしわかった、私は限界を定めようとしていた。
体の限界に挑戦しようとしてしまっていた。
ここはひとつ、限界を定めるのをやめよう。
眠いときは寝る。風邪だからではない、眠いから寝るのだ。

posted by どらっくす at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月24日

風邪。

風邪をひいてしまったのか、頭がくらくらとしている。
風邪に効きそうなことをとりあえずいろいろとやってみる。
ビタミンを取ったり、そんなようなことだ。
さあすぐに治ってくれ。
なんて思っても、そうすぐには治らない。
でも気力があれば、すぐに治すことだってできるだろう。
「風邪をひきました」
口に出してみると、なぜだか具合がさらに悪くなったような気がする。
「本当は風邪なんてひいていません」
嘘をついてもむなしくなるだけ、治るわけではない。
「風邪をひいているような気がします。すぐに治るような気がします」
これぐらい控えめであれば、なんだか良いようだ。
あんまり気にしすぎても仕方がないのだけど、風邪のときは寝るに限る。限るならばさっさと寝た方が良い。
寝てしまって大丈夫だろうか。風邪と思っていたけど、とんでもない病気かもしれない。
そんなことを言うと、本当かもしれないと思ってしまう。
しれないしれない。あったかもしれない。なかったかもしれない。
あばんば、ればんば、どれにんかんだ。
もう少しだけがんばって生きよう。
posted by どらっくす at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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