どらっくすのちゃんぷる〜日記。

日記?の更新は基本的に毎日22時から24時の間くらいにしています。

2016年12月20日

丸。

頭の中でずっと考えていても何も出てこなかった。
「やっぱりやめておきます」
「どうして?」
白紙の紙を前にしているだけだった。
何かを描くときに人に見られているというのはやりづらいものだ。
そんな話をしていたら、じゃあ自分を書いてくれと言われた。
人の顔は、顔を見なければ描けない。顔を見ることになれれば見られていることも気にならなくなるだろう。
だが、いざ目の前に人がいるとなると、ペンが動かない。
「手が動かないんです」
「ふーん」
じっと見られているだけで汗が出てきた。誰かに見られるというのはこんなに緊張するものだったろうか。
「紙の上に丸を描いてみて」
言われるままに丸を描く。
いつものようにはいかない、震えてしまうし、いびつな丸になってしまった。
「描けたじゃない」
「そりゃこれぐらいのもので良ければ描けますよ」
「でも描けた」
もう一度丸を描く。今度はさっきより少しマシになった。
「描けないんじゃない、描かなかったの」
「そういうわけじゃ……」
「自分の思ったように描けないというのは、描けないということじゃない」
さらにもう一つ丸を描いてみた。普段描いている丸に近づいた。
「丸ぐらい単純なものなら描けるかもしれませんけど、複雑なものになるとちょっと」
「描けそうにない?」
「はい」
「描けそうにないんじゃなくて、描かないという選択をしただけ」
「描かないという選択……」
「描くと決めて、あとは全力で描く。それだけでいいはずでしょ」
「誰かに認められたいとか、そういうことを考える必要はない」
息を吐く。
もう一度紙をよく見る、ペンをしっかりと握る。
なんだか描けそうな気がする。

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2016年12月19日

真冬の花。

さわやかな風が吹いていた。
さわやかな風がいったいどういう風であるのかを表現することができるかどうかが話をうまく転がしていくことに関係あるかどうかは知らないが、さわやかな風をさわやかな風としか書けないのであれば、風をうまく感じられていないということである。
まず匂いを嗅いでみる。風の匂いだ。少なくとも甘い匂いではない。うまい具合に花でも咲いていれば良かったのだが、咲いている気配はない。そもそも今は冬だ。冬の花と言われてもパッと思い浮かばない。自分の中にない情景を描くことはできない。冬に咲く花をネットで調べたとして、そこに実感を持たせるためには、また別の現実感を描くように努めなければいけない。
うっすらと、排気ガスの臭いがする。あとはごみためのようなどぶ川のような臭いもする。端的にいえば臭い。
落ち着いてにおいを嗅いでみれば、はたしてさわやかな風であるのかすら危うい。
だが、どぶ川の臭いのする風が吹いていた。では、どうにも最初と雰囲気が違いすぎる。恋愛ものでも始めようかという気分から、どうあがいても最終的に主人公を殺したくなるような気分に変わってしまう。
どぶ川の臭いのする風が吹いているはずなのに、彼女の周りだけ輝いていた。などと書き出せば少しは恋愛が始まりそうだろうか。
正直に言おう、彼女などと書いたが自分の中では光しか見えていない。なにがしかが光ってはいるのだけど、光の中心にいるのは女性ではなさそうだ。嘘は書けない。
もちろんお話しというのは嘘を書くことではあるのだけど、嘘の中の本当を書くことがお話しである。
嘘の中でさらに嘘を書いてしまうと、途端に嘘の臭いが文章に充満する。どぶ川が近くにあるみたいだ。
よくよく見てみると、光の中心には花が咲いていた。冬なのに花?こんなどぶ川みたいな臭いのする一画に咲いている花などたいした花ではないだろう。
だが目が離せない。道路の向こう側の歩道の横に白く輝く花が咲いている。風は変わらずどぶ川の臭いのまま、排気ガスが混じり喉に絡みつく。車が一台通る、さらに一台。ああ、早く近くで見たい。
車はまだ続いてやってくる。どんどんやってくる。やってきすぎて渋滞になったので、隙間を歩いて向こう側に渡った。渡ると同時に車の流れがまた早くなる。
近寄ってみると、たんぽぽだった。真冬に咲くたんぽぽが輝いていた。まだ春は遠いのに。
どうしても、どうしても摘んでみたくなってしまった。あるいは摘むことで、このたんぽぽが現実のものであると確定させたかったのかもしれない。
しゃがみこみ、たんぽぽに手を伸ばしたところで大きなクラクションの音がした。
驚いた顔をしながら必死にハンドルを切ろうとしてる運転手の顔、タイヤに踏みつぶされていくたんぽぽ、そして最後に見たのは近づいてくる車をなんとか押さえつけようと突き出された自分の手だった。



本を読んでいたら、なんとなく思いついた言葉を書いていくことも大切だと記されていた。
なので、思いついたままに書いていったらこうなった。
なんとなく気に入っている。
posted by どらっくす at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月18日

ブラッド。

パシーン、パシーンと、逆水平チョップが胸板に当たる音が会場に響いていた。
村山の胸板は真っ赤になり、赤を通り過ぎ紫と黒の間の色になっていた。
だが村山は胸を相手に突き出すことをやめなかった。それが村山のプロレスラーとしての意地だったからだ。
負けるにしても、無傷では負けない。意地を張りすぎて、先輩にかまされたことも何度もあった。一度など額にもろに拳を入れられ大流血した。何年も前のことなのに、今でも額には古傷となって残っているほどだった。

相手の強さを引き出し、完膚なきまでに負ける。
5年ぶりに組まれたシングルマッチであっても、村山の気持ちは変わらなかった。自分の良い部分を出すことにこだわりはない、相手の魅力を引き出すことに全力を尽くす。
相手は海外修行から帰国したばかりの田島、リングネームはブラッド。必ず相手を流血に追い込むとヒールレスラーとしてこれから売り出す選手だ。
会社に田島の凱旋試合の相手を頼まれたときに村山は一つ条件を出した。
「どれだけ流血したとしても、絶対に試合を止めないでください」
村山の所属するJPE(ジャパンプロレスリングエンターテイメント)では、家族で楽しめることをモットーに流血試合をすることはご法度になっていた。

田島を帰国させるにあたって、ブラッドというキャラクターを与えるのにも社内で揉めた。
最初は社長の飯島も反対していた。だが、現場を統括している佐川が田島をヒールとして帰国させることにこだわっていた。
「今の時代に流血はいらないだろう」
「田島は地味ですが実力はあります。華もある。ベビーフェイスでやっても時間をかければいずれオーバーするでしょう。ただここでインパクトのあるキャラクターを与えて、一気にトップヒールに据えることができれば、数年は抗争を作り続けることができます」
「ふむ」
「山崎が絶対的なベビーフェイスでいられる間は、田島にはヒールとしての経験を積ませてやるべきです」
「わかった。だが半年だ。半年様子を見て、ダメならベビーにもどす」
「とりあえず最初は村山を当ててみましょう」
村山は善玉であるベビーフェイスの軍団の中では負け役であり、相手を光らせることも上手く、それでいて団体の中での格は悪くなかったので、若手の凱旋試合の相手によく選ばれた。地味な中堅選手であり続けているというのも必要な役割であり、村山と戦ってオーバーつまり人気が急激に上がった選手も多かった。
「村山。今度の田島の帰国試合の相手を頼む」
「はあ、構わないですけど、定典なんかの方が良いんじゃないですか?」
忠岡定典、ヒール軍団BTOの中堅レスラーだ。
「いや、田島はヒールで帰って来させることにした」
「え?田島をヒールで?」
「ああ、しかも相手を必ず流血させる」
「流血はご法度でしょう」
「だからこそだ、昔の田島を知ってるファンほど驚く。すでにテレビ局にも了解は取ってある」
田島はJPEのトップスターの山崎の付き人であった。付き人として山崎のブログなどにも登場し、若手としてはかなり人気があった。
「ひとつ条件があります。」
「なんだ?」
「どんなに流血をしても試合を止めないでください」
「それは……」
佐川は言いよどんだ。テレビ局の了解を取ったと言っても限度はあるからだ。あまりにも凄惨になれば放送できない。
「流血でドクターストップでは客は田島をただのヒールだとしか思わない。3カウントできっちり勝つからこそトップだと認めるのです」
「3カウントで試合を終わらせる。約束できるのはそれだけだ」
村山は佐川の顔を見て、責任は自分で取れということだと解釈した。
「ありがとうございます」

村山の胸がどす黒くなり、血がにじみ出てきた。
「村山さん、フィニッシュ」
血が出たことで安心したのか、逆水平の合間をぬって田島が話しかけてきた。村山は首を横に振った。
田島がもう一発逆水平チョップを出そうとしたところで、村山は田島にヘッドロックを仕掛けた。
「肘こい」
村山が田島にささやいた。
田島はヘッドロックから抜け出し、村山をロープに振った。そしてロープから跳ね返ってきた村山に向かって肘を突き出した。
ゴンという衝撃音が場内に響き、観客のざわめきが会場中に広がった。
村山はリングに倒れこんだ。
レフェリーの白田が慌てて村山に近づく、田島は一瞬動揺を見せたが、すぐにヒールレスラーらしく自分の肘を観客にアピールしだした。
「大丈夫か?」
白田が確認すると、村山の額からはすでにかなりの量の血が流れ出ていた。
「止めるか?」
「3カウント」
村山はそれだけ言うと立ち上がった。
「こいオラ!」
田島は白田をちらりと見た。
「ファイト!」
白田の戦いを促す声を聞いても田島はまだ動き出さなかった。村山には田島の動揺がわかった。ここまでの流血試合をすることになるとは思っていなかったはずだ。だが、田島の顔は笑っていた、ギリギリのところでヒールを保っているのだ。そうだ、それでいい、お前はブラッドなんだ。血をたのしめ。
村山は自分の額を叩きながら吠えた。叩くたびに血が飛び散り、観客から悲鳴があがる。
それでも動かない田島の顔に、村山は思いっきり張り手を打った。張り手で我に返った田島はすぐさま必殺のパイルドライバーを村山にかけてフォールした。
レフェリーの勝ち名乗りを受ける田島を横目に見ながら、村山は額の古傷がうまく開いてくれたことに感謝していた。



今日あった永田対中西に感動したのだけど、書き出してみたらまったく違う話になってしまった。しかも長い。
でも、書けて良かった。
posted by どらっくす at 01:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月16日

岩山さん。

たまにすれ違う、ごつごつと岩のような顔をしている人がいた。
心の中で私は岩山さんと呼んでいた。
岩山さんと私が話したことはなかった。
ただすれ違うだけだった。私のことを認識しているのかすら知らない。
カレー屋に行ったときに、岩山さんがいたことがあったので思わず声をかけそうになったことはある。
だが、考えてみると見知らぬ人間に、知人であるかのように話しかけられるのも迷惑であろうとやめた。
岩山さんとすれ違う日には、規則性もなかった。
最近岩山さんとすれ違っていないなと思うこともあれば、毎日すれ違うこともあった。
岩山さんは謎の人だった。岩山さんからすれば私が謎だったのかもしれない。
ある日、岩山さんが誰かと話しているところに出くわした。
「というわけなんです」
「そうだったんですか、高田さん」
高田さん?私はちらりと二人を見た。
高田さんと呼びかけられたのは岩山さんだった。
岩山さんは、高田さんだったのだ。
似合っているような、そうでもないような。
言われてみれば高田さんのような気もしてしまう。
それから二度と岩山さんを見かけることはなかった。
きっと何かがずれてしまったのだ。
岩山さんが高田さんになってしまったときに、岩山さんの人生は私の人生とは違う道を進みだしてしまったのだろう。


posted by どらっくす at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

しょうが。

「しょうが買ってきて」
「え、面倒だからやだ」
「今日は湯豆腐にしようと思うんだ」
「うん」
「しょうががあった方が良いと思わない?」
「思うよ」
「じゃあ買ってきて」
「自分で行きなよ」
「地球って温暖化してるらしいんだ」
「なにいきなり?」
「どんどん暖かくなっていくんだって、オゾン層が破壊されたり、二酸化炭素が増えたりして」
「へー」
「だからきっとどんどん暖かくなって、冬でも半袖でいられるようになると思うんだ」
「なるほど」
「私がしょうがを買いに行くのは、それからで良いと思う」
「気の長い話だね」
「だから今日は買ってきて」
「いやです」
「だいたいおかしいと思うんだよね。温暖化ってずっと言われてるのに、全然冬があったかくならないじゃん」
「政治的な理由とかで温暖化してることにしないとまずいとかあるんでしょ」
「いや違うね」
「ほう?」
「これはすでに異常気象なんだよ!」
「つまり?」
「本来ならハワイぐらいの気温のはずなのに、異常気象で寒くなってるの」
「なるほど」
「そんな異常気象の時に買いに行く方がおかしい!」
「じゃあ、しょうがはいらないと」
「え?」
「そんなおかしいことをする必要ないもんな」
「いや、そういう話では……」
「やっぱり家が一番だね!」
「わかったよ、自分で買ってくるよ」
「あ、それなら一緒に行く」
「え?なんで?」
「なんでって、しょうがないから」



今日はしょうがを買ってきました。
そして、思いついたのです。
しょうがで始まって、しょうがないで終わってみようと。
posted by どらっくす at 00:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月15日

片手運転。

商店街を歩いていると、自転車に乗ったおじいさんがいた。
おじいさんは片手を少しハンドルから離して、片手で運転していた。
「危ないなあ」
片手で運転しているせいでふらふらとしている。倒れてしまうのではないかと思うほどだ。
そうしてふらふらーっとしながら、私の方に向かってくるのだ。
私は歩みを止めた。
すると、おじいさんは軽く会釈をして、ふらふらと横の路地へと消えていった。
なるほど、あれはおじいさんなりに手信号をしているつもりだったのだ。
安全のために行っていることが、周囲に不安を与えているとも知らずに。
だが私はどうなのだろう。
誰かに何か不安を与えてはいやしないだろうか。
すれ違う人たちの目に、不安が浮かんでいなかっただろうか。
やりたいことに体が追いつかなくなるのは、おかしくも悲しいものだ。

posted by どらっくす at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

噛み屋の勘兵衛。

「よく噛んで食べなさい」
子供のころからそう言われ続けていたので、何でもよく噛んで食べるようになった男がいた。
名を勘兵衛と言った。
勘兵衛はとにかくよく噛む男で、朝から晩まで何かを噛み続けていた。
いい加減にやめろと言われても、よく噛んでいるだけだと言い返すような男だった。
あまりにも噛み続けるので噛み屋の勘兵衛と呼ばれたほどだ。
そんな勘兵衛が噛むのをやめるときがあった。人が死んだ時だ。
勘兵衛が人が死んだ時に噛むのをやめるようになったのはばあさまが亡くなった時だった。
その時もすんなりやめたわけではない。
村の長老に噛むのをやめろと言われて勘兵衛は言い返した。
「これはばあさまが天国にいけるように祈ってるんだ」
「なんで?」
「神さまに少しでも近づけるようにかみつづけてるんだ」
「ばあさまは仏になったんだよ」
これには勘兵衛も恐れ入った。
それから勘兵衛は、人が亡くなった時だけはものを噛まなくなった。
そんな勘兵衛だったが、病には勝てなかった。
熱が出て三日で死んでしまう三日病にかかり死んでしまったのだ。
三日病とは不思議な病で、一度にかかる人間は一人。だが確実に死ぬという病であった。
勘兵衛は病床で妻の妙子にこう言い残した。
「どうもオレは明日か明後日には死ぬようだ」
「そんなことを言わないように」
「いや、わかる。三日病だ」
「そんな」
「いいか、オレはこれから死ぬ。オレが死んだら死体を焼くんだ。そして焼き終わるまでなにかものを噛み続けてなくちゃいけないよ。お前だけじゃない、村中全員だ」
「心得ました」
「さあ何か噛むものを持っておいで」
妙子が部屋を出て台所に行き、たくわんを口に入れたところで勘兵衛のうめき声が聞こえました。
急いで部屋に戻ると勘兵衛は自分の舌を噛み切って死んでいたのです。
それから妙子は勘兵衛の遺言を守り、村中の人に何かを噛みながら葬式をするように頼みました。
他ならぬ噛み屋の勘兵衛の願いならと、噛みながらの葬式をあげました。
式の間も、次は誰が三日病で死ぬのかと、村の人たちは噂していました。
しかし、三日病で死ぬものはそれから出なかったのです。
村ではそれ以後の葬式も、ものを噛みながら行うようになりました。
村はやがて噛み屋村と呼ばれるようになり、字を変えて神屋村となりました。そして村の名前が変わった時に、記念として勘兵衛の像が作られました。
噛み屋の勘兵衛の像は、ご神体として神屋村の神社に今でも祀られているそうです。



たまたま芥川龍之介のくもの糸を読んだので、そんな感じのテイストのものを書いてみようと書き出してみたところこうなりました。
あまりそういうことを明かすのもどうかと思いますが、明かさないのも隠し事をしているようで気分が落ち着かないものなのです。
posted by どらっくす at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月13日

売り切れ。

「売り切れかあ」
セールというのは、いつの時代も熾烈を極めるものである。
情報化社会が進み、店に行列ができるようなことは少なくなった。
だが、代わりにインターネットショッピングの発展が目覚ましく、あっという間に情報は共有され、目玉商品ともなれば1秒ともたない時代が到来してしまったのである。
「また売り切れ」
普通にアクセスしていたのでは買うことができない。
セールというのは、パターンが繰り返されており、このパターンを読み切ったものだけが商品を手にすることができるのである。
「また買えなかった」
裂太は、売り切れの文字を見つめていた。
セールの時間を読み切っていたにも関わらず、2クリックの間に売り切れてしまった。
ゲーム機が欲しかったのだが、どうがんばってもセール品を買うことができなかった。
しかたがないので外に出てみると、裂太の欲しかったゲーム機を持っている少年とすれ違った。
少年の来た道の方を見てみると、ゲーム屋の閉店セールをやっていた。
だが、客はほとんどいない。ネットに客を奪われてしまったのだ。
やけくそ気味に売る店主に欲しいゲーム機の価格を聞いてみると、ネットのセールよりも少し安いぐらいの値段であった。
裂太はネットだけですべてを学ぶことはできないということを、初めて自分の身で体験した。
ゲーム屋の店主は「ありがとうございます」と言ってくれたが、きっと自分のような存在があの店を閉店に追い込んだのだろうと、なんだか気分が重くなってしまった。
帰ってから、つい癖でネットのセール巡りをすると、あの店よりも安い値段で売っているサイトを見つけた。
購入手続きをしてみると、あっさりと買えてしまった。
「買えたな」
購入完了の画面と足元にあるゲーム機を交互に見つめた。
店主のやさしそうな笑顔がちらつく。
「よし、返品しよう」
レシートとゲーム機を持ち、裂太はゲーム屋に向かった。
自分のことをクズかもしれないと思ったが、どうせ世の中にはクズだらけなのだ。いまさら一人増えたところで変わりはない。と思い直した。



途中で全然別の話になってしまった。
設定を練っている間に、あまりにも話を大きくしすぎておかしなところが出てきてしまい、ざっくりと切り捨てた。
設定を考えるときは、十分に時間を取ることが必要なんだな。
ラベル:創作文
posted by どらっくす at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月11日

新しいですねん。

目をつぶり深呼吸していたら、眠くなってきたけど、とりあえず右も何かあったらネット配信を出すために、深緑のプロフィールを出すために名前だけにもいい場合を止めてありがとう!私はおめでとうございます。そして新しい一歩くらいだったよー、一度でありながらも大きく世界を止めているだけなら、たまには携帯から入場してみたよ。

ーーーーーー
携帯の予測変換だけで、物語が作れないかやってみたのですが、普通に文章にするのも難しい。
でも、これはこれでおもしろさがありますね。
゙ありがとう!゛からの゙私はおめでとうございまずの流れはなんか笑ってしまう。
こういうのが、意外と新しい扉を開いてくれそうな気がします。
posted by どらっくす at 22:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月10日

ふわふわ病。

久しぶりに料理をしてみた。
料理と言ってもただレンジでチンするだけ、あまりにも手軽だけど、一応野菜を切ったりしたから料理だ。
野菜を切って、肉を入れて、レンジでチン。
これだけだと味がしないので醤油と日本酒を入れる。
ああ、風味が増してよろしいなどと思っていたら、食後に頭がふわふわとしてくる。
どうやら日本酒を入れすぎたみたいだ。
次の日になっても頭がふわふわしっぱなしなので病院に行った。
「なんだか頭がふわふわするんです」
医者は一通り喉やら胸やらを診てくれた。
「ああ、これはふわふわ病ですね」
「どういう病気なんですか?」
医者は途端に神妙な顔つきになったので、こちらも身構えた。
「ただの二日酔いです」


ラベル:創作文
posted by どらっくす at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バグ。

気がつくと体が空に浮かんでいた。
今まで空に浮かんだことがなかったが、実際に浮かんでみると、なんとも不安定で心もとない。
大体足がつかないのだから、進もうにも進めない。
しかも困ったことに、妙に人通りのあるビル街で浮き上がってしまったのだ。
下の人たちはなにやらざわざわしながらこっちを見上げているし、ビルの中の人たちからは見下ろされている。
どうにも中途半端な浮き方である。
いっそ空を飛べてしまえば良かったのだけど、時折吹いてくる強烈なビル風でゆらゆらと動くぐらいで、自分で動くことはできなかった。
「大丈夫ですか?」
下から見上げている人が声をかけてきた。体を動かすこと自体はできるのだけど、妙な不安定さがあるのでそちらに顔を向けるには怖かった。くるんと回って、どすんと落ちてしまいそうな感じなのだ。
それにしても下の人間の凡庸なこと。
大丈夫なはずがない。人間が浮いているのだ、どこに大丈夫な要素があるのか。自分だったら「浮き上がっちゃって、ご苦労様です」ぐらいのことは言う。
「ええ、なんだか浮いちゃったみたいで。普段から空気が読めないと言われるんですよ」
場を和ませるつもりだったが反応はなかった。ますます下を向くのが怖い。
その後も誰が読んだのか、警察やら消防隊やらレスキュー隊やらいろいろな人たちが来た。
レスキュー隊はなんとか引きずりおろそうと頑張ってはくれたのだが、どうにもならなかった。不安定ではあるし、まったく動かないというわけでもないのに、一定以上動かそうとするとピタリと止まり、また元の位置に戻された。
「すまんな」
てっきりレスキュー隊の誰かに言われたのだと思い返事をした。
「いえ、仕方がないです」
「どうしました?」
「え?すまんな。と言われたので返事をしただけですが」
レスキュー隊は「待っててください」と言い残し、下に降りていった。待ってるというか、動けないんです。
「見た目ではわからないけどだいぶ衰弱してきているのかもしれない。幻聴が聞こえているみたいです」
降りた隊員が小さな声で言うのが聞こえた。声というのは、意外と上には響くものなのだな。
しかし、レスキュー隊が言ったのではないとすると、いったい誰が言ったのだろう?
「わしだよ、神だ」
「神さまですか」
「そうだ。すまんがお前の世界でバグが出てしまったみたいでな」
「はあ」
「お前をそこに置きっぱなしにしておく分には問題ないのだが」
神は少しためを作った。自分はもう少し信仰心を持つべきだったと後悔し始めていた。
「元に戻すためには、世界を作り直さないといけない」
「作り直す?」
「一部分のバグだから、地球を壊すくらいで大丈夫だろう」
「ああ、それで時間が経てばもとに戻るとか、そういうことですか」
「いや、元には戻らん。元に戻すと同じバグが出てしまうからな」
「ということは」
「地球がなくなるくらい、宇宙全体からしたらたいしたことではない」
「バカ!」
自分は人類史上初めて、直接神にバカと言った人間だろう。
「じゃあほっとけよ!バグなんか放置だ!オレはここでずっと暮らす!!」
「ああそう。じゃあがんばって」
神は消えた。なんとなくそんなような気配だった。
「あのー、じゃあ放っておいても良いということでしょうか?」
「うるせえ、バカ!良いからもう放っておいてくれ!!」
「わかりました」
どうやらレスキュー隊の声だったということは、どなり散らした後に気がついた。
だが、どっちにしたって同じだ。自分はもうここに居続けるしかない。
警察が野次馬たちを散らそうとしている声が聞こえる。
上空にヘリコプターがやってきた、テレビ局かもしれない。
カシャカシャと、スマホで撮っている音も聞こえる。
すべてがどうでも良い。
自分はここで死ぬまで浮きっぱなし、せいぜいしばらく観光名所になるくらいだろう。
いや、食料さえ貰えれば、ここで生きていくことぐらいはできるかもしれない。
自分を覆うように家を建ててもらえば、結婚だってできる可能性もある。
すべては神の思し召しであるとするならば、ここでたのしむことだって許されるはずだ。
当面の問題は、急にもよおしてきた尿意だけだ。



ちょっと気の抜けた短いコメディのつもりが、思ったよりも長くなってしまった。
考えてみると、よくバグもなく世界は回っている。
ゲームにバグは付き物なのに、もしかしてこの世はゲームではないのか。
あるいはバグが起きても気がつかないだけなのだろうか。
posted by どらっくす at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月09日

青空。

青空にほどよく白い雲がある。
太陽のまわりは青く透き通っているのに、離れるに従って白い雲が出てくる。良い天気だ。
雲一つない空というとずいぶんと良い天気のような気がするが、雲が一つもない時の方がかえって良い天気だとは言いづらい。
雲があってこその天気の良さであり、雲がないのはただの空を見ているようでなんとなく落ち着かない。
天気の良い日は歩きたくなる。
日差しを浴びることを体が求めているのか、運動不足であるから解消しようと無意識が訴えかけてくるのか。
とにかく長い距離を歩きたくなる。
別にそれほど田舎というわけでもないが、少しはずれまで歩くと、遮る物が何もなく。
畑と国道、そして田んぼ。それから送電線が見える。
送電線を支える鉄塔と鉄塔の間からはるか遠くに一軒の家が建っていた。
何度かその家の近くまで歩いていこうとしたが、いまだにたどり着けたことがなかった。
いつだったか、あれはそう3年ほど前。
いつものように晴れた日だった。
いつものように町のはずれまで来た僕は、いつものようにその家を見て、いつものように帰るはずだった。
だが、家はなかった。
何があったのかはわからない、いつなくなったのかもわからない。
そうしょっちゅう見に行くような場所でもなかったから。
ショックは受けたものの、それからもその場所に行くのをやめることはなかった。
3年ほど経った今日も、空は青く、ほどよく雲が流れていた。そして、家はない。
家のない風景もだいぶ見慣れてきた。
そのうち、家が建っていたことすら忘れてしまうかもしれない。きっとそうだろう。
向こうからは僕の姿が見えていたのだろうか?
もし見えていたのなら、家から見えた景色は今と変わらないのかもしれない。
送電線の向こうの田んぼの先の国道から畑を越えた少し先に立っている男。
いつかこの景色の中から、僕自身も消えてしまうのだ。

posted by どらっくす at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月07日

豚肉とたまねぎ。

「豚肉だったと思うんだけどねえ」
「レンジが壊れてたのかな」
「レンジが壊れてたくらいじゃこうはならないでしょ」
母と妹が『レンジでチンの簡単レシピ』という本に従って作った豚肉料理のはずだった。
豚肉とたまねぎを調味料とまぜて電子レンジ用の耐熱容器に入れて5分温める。たったこれだけの手順、間違えているはずはなかった。
だがレンジから出てきたものは、ペースト状で色は赤黒く、到底食べ物には見えなかった。
「あ、でも香りは良い」
たしかにいい香りだった。
「ちょっと食べてみようかな」
「やめた方が良いだろ、もしかしたら肉が傷んでたとか、そういうことかもしれないし」
「でもおいしそう」
妹は指で一すくいして口に入れた。
「こら、おさじを使いなさい」
「おいしい!」
妹が指で食べようとしたので、母がスプーンを渡した。そして二人してその謎の物体を食べだした。
「あら、ほんとにおいしい」
「でしょ」
「豚肉とたまねぎしか使ってないんだしね、食べても大丈夫でしょ。お兄ちゃんも食べる?」
母の言葉に一瞬心が揺らいだが、得体のしれないものを食べるのは嫌だった。
「いらない」
「あらそう、じゃあ二人で食べちゃおうか」
「うん」
言うが早いかあっという間に二人で食べつくしてしまった。
二人があまりの勢いで食べたのでさすがに気になり、皿にこびりついたものを少しだけ指ですくってなめた。
「うまい」
「でしょ」
「でも、なんなんだこれ?」
「もう一回同じように作ってみたら」
「やってみよう」
まったく同じ手順で、豚肉とたまねぎと調味料を入れ、レンジで温めてみた。
今度は、きちんと豚肉とたまねぎを温めたものができた。
「うん、普通だな」
「こうなるはずだよね」
「さっきのやつがもう一回食べたい、オレちょっとしか食べてないし」
「意地はるからじゃん」
それから何度試してみても、あの謎の料理になることはなかった。
ただ一度だけ、フライドポテトが出てきたことがあった。
もしかしたらこの電子レンジの中の空間は、何らかの条件で別のレンジと繋がるようになっているのかもしれない。
そのことに気がついてからオレは初めて会う人にはこう尋ねている。
「レンジからいきなり豚肉とたまねぎを温めたやつが出てきたことない?」



最近、レンチン料理が便利だと気がつきました。
たまねぎ一個でも楽に調理できます。栄養素がどうとかは知ったこっちゃありません。
posted by どらっくす at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月06日

きっといける。

宗教というものをまったく信じていなかった。
なのに、なぜオレはこんなところにいるのか。
こんなところというのは、壇上にいる女性が声を張りあげ、大勢の人たちが坐禅をしているようなところのことである。
「目をつぶったとしても瞑想したことにはなりません」
壇上の女性は一呼吸おいた。皆の視線が集まるのを待っているのだろう。
「呼吸をして、宇宙と繋がることが大切なのです」
女性は目をつぶり、大きく息を吸い、一瞬止まったかと思うと、大きく息を吐いた。
つられて自分も呼吸をしてみる。改めて意識してみると、自分がどうやって呼吸していたのかがわからない。
わからないついでに、自分がなぜこんなところにいるのか、よくよく思い出してみるがやはりわからない。
「さあ、深呼吸をしてください」
つられて自分も大きく息を吸う。
吸った息を吐く前に、周りを見回してみる。
とにかくたくさんの人がいたが、皆一様に坐禅をして深呼吸をしていた。
「あら、あなた。大変ね」
壇上の女性と目があった。まったく見覚えはなかった。
「さあ、深呼吸して」
言われて息を吸おうとしたが、どうやって息を吸うのかがわからなくなってしまった。
「はやく!はやく吸うの」
慌てれば慌てるほど、息の吸い方がわからない。かといって息を吐くこともできず、ただただ息苦しかった。
心臓も止まる寸前のような気がする。手足がしびれ、意識が薄れていく。
自分が死ぬのだとわかり、すべてを諦めた。
最後くらいはゆったりと死にたかった。
体の力を抜き、ゆっくりと息を吸い、そして吐いた。
「もう大丈夫」
女性の声が遠くに聞こえた。
目を覚ますと病院だった。事故にあって死にかけていたらしい。
となると、あれは幻で、走馬燈のようなものだったのかもしれない。
よりにもよって、変な幻を見たものである。
それからしばらくして、旅行先で弥勒菩薩の像を見てギョッとした。
壇上にいた女性とそっくりだったからだ。
それからオレは一日に一度は瞑想するようになった。
菩薩さま直伝なのだから、極楽だか浄土だかには、きっといけるのだろう。



信じる者は救われるというけど、救われたから信じるという方が、順番としては正しいような気がする。
救われていないのに信じている人がいたとしたら、いったい何を信じているのだろう。
仏像やキリスト像は、本人ではないのに。
posted by どらっくす at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月05日

十分な高さ。

屋上から見る景色は意外にも綺麗だった。
下を向くと、思ったよりも地面が近い。はたしてこれでうまく死ねるのだろうか。
死のうと思った理由は、失恋ということになるのだろう。
「あなたといると私まで死にたくなる」
彼女の別れの言葉を聞いたとき、僕は生きる気力というものを、生まれながらに持っていなかったことに初めて気がついた。
もう一度下を見る。やはり近い。
「その高さでも十分に死ねるよ」
振り向くと、老人が立っていた。帽子を被り、スーツを着ている。あだ名をつけるならゴッドファーザーだろう。
「いわゆる錯覚というやつだ。火事のときに飛び降りる人がいるだろう?命の危険を感じると、実際よりも低く見える」
ゴッドファーザーは、すぐゆっくりと歩いて僕のすぐ後ろに立った。
「いや、死ぬつもりなんてないんです。」
その場をやり過ごすつもりだった。だいぶ勢いはそがれてしまったが、死ぬのをやめるほどではなかった。
ゴッドファーザーは、僕の肩に手を置いてきた。
「なに、止めるつもりはないよ」
「え?」
「死にたければ死ねばいい、踏み出せないのなら背中を押そうか?」
「いえ、結構です」
ゴッドファーザーはニヤリとした。冗談だったのだろうか。
「ここに100万円ある」
「はぁ」
「これで君の命を買おう」
とんでもなく怪しいにおいがする話だ。
「100万円……、命を買うには少し安くないですか?」
ゴッドファーザーは声を出して笑った。
「これから死のうという人間が、そんな条件を出してくるとは思わなかったよ。いくらでも構わない、君の命の値段はいくらだ?」
聞かれてみると困る質問だった。そもそも僕は生きようという気力すらなかったわけで、値段をつけられるようなものではない。
命の値段がいくらか、真剣に考えたことなどなかった。
「死亡時には、2000万円の保険金が出るとか、親に聞いたことがあります」
「それが君の命の値段かい」
「はい、社会的には」
「社会を知ってるようには見えないがね……、よろしい2000万円出そう」
言葉に詰まった。2000万円でできること、いったい何があるだろう。想像がつかない、家とか買えるのかな?
「それで、命を買うって、具体的には何をするんですか?」
「何も」
ゴッドファーザーは振り向いて歩き出した。去り際に「君の命は私が買ったよ」とだけ言い残していった。
2000万円なんて嘘に決まっている。僕にそれほどの価値があるとは思えない。
だが、今飛び降りて死んだとして、その死はいったい誰のものになるのだろう。
さっきまで自分だけのものだったはずの死が、するりと手から抜け落ちてしまった。僕の死はゴッドファーザーに、2000万円で買われてしまったのかもしれない。命を買うと言っていたのに。
僕はもう一度下を見た。死ぬのには十分な高さに見えた。



三島由紀夫さんの「命売ります」という本の序盤を読んでいたら、突然こんな話が頭の中に浮かんできた。
書き終わった後に思ったのだけど、同じような話が読んだところ以降に出てきちゃったらどうしようということ。
まあ、そのときは、そのときだな。
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posted by どらっくす at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月02日

コーヒーの血。

朝に飲むコーヒーは格別だ。
熱ければ熱いほど良い。
口をつけた瞬間に火傷するのではないかというくらい熱くなったカップから、流れ込もうとするコーヒーをいったん唇で受け止める。
少しだけ閉じた唇を開き、ゆっくりと熱すぎるコーヒーをすする。
ズズと吸い。ハーと一息入れる。
冷え切った手でカップを握ると、温かい血が通いだすのがわかる。
私の血がコーヒーでできているのなら、血管からこの熱いコーヒーを注ぎ込みたい。
「目は覚めた?」
誰かが私に話しかけている。部屋の中を見回しても誰もいない。
「目は覚めた?」
もう一度見回す。誰もいない。
いや、一人いる。私自身だ。
私は再び、私の唇に受け止められた。激しく抵抗しても、ズズと吸われればひとたまりもない。
私がハーと息を吐いた。いつも通りだ。なのに、私はカップの中にいる。私は私を見ている。
私が私にすべて飲み込まれ、体中を巡る。巡る血はすべて黒く、コーヒーの色をしていた。



使っていないものをある程度処理しようと、とりあえずtwitterのツイートを削除。
あまりに昔のものは消えないみたい。
ついでにYoutubeの動画にも鍵をかけた。保存してないので消すのはまた今度。
消したら消した分だけ、また次を作りたくなるんじゃないかと思う。
たぶんだけど、日記はちょっとで良いんだ。
変な文章だけ書いていよう。
posted by どらっくす at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月07日

ドーナツ。

どうも自分はストレスがかかると食べることに逃げがちなようです。
とにかくもうお腹がいっぱいになるまで食べる。
しんじられないほどに食べる。
そういうことになってしまいがちですね。
気をつけなければいけないのかもしれませんが、
そう思うことがまたストレスになるかもしれません。

いっそもうバラバラにしてくれたら楽なんですが、
そういうわけにもいかないでしょうし、
第一本当にされるのは嫌なのです。
ブラックホールに吸い込まれるのが一番良いかもしれませんね。
なんかよくわからないうちに消えていけそうです。

ああ、そうか。
自分を消してしまいたいという気持ちが出てくるから、
存在を証明しようと、たくさん食べてしまうんだな。
そして、その結果としてまた消えたくなる。
たくさん食べる。
そういうループなのかもしれない。

僕はいまねぇ、
静かに過ごしたいんですよ。
それなのに、上の階でドンドコやっていて、
落ち着かないんですよね。
どうしたもんでしょうか、落ち着かないのです。

法律が悪いと思いませんか?
こういう場合に、何もしちゃいけないなんて、
間違った法律なんですよ。
静かにさせても良いという法律を、
国は作るべきなのです。
国が作らないの名であれば、
僕が作ってしまうのも良いかもしれませんね。
どうせ消えてしまうのですから。

ドーナツ食べたいな。
あるかなドーナツ、スーパーにドーナツあるかな?
ドーナツ屋がやってれば良いんですけど、
さすがにこの時間にはやっていないでしょうし。
上の階の人は、ドーナツみたいかな。
ドーナツみたいにしてやろうかな。
さくさくでおいしいドーナツの穴は、
きっといつまでも塞がらないでしょう。
私は、それを黙ってみているしかないのです。
posted by どらっくす at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月11日

『花の咲く場所。』

僕の居場所を探している。
ずっとずっと探している。
どこにあるのかわからない。
ずっとずっと探している。
だけどどこにもなかった。
だから作ろうとした。

失敗した。
やっぱりどこにも居場所なんてなかった。
「どうしたら良い?」
「どうだろう。」
風は答えてくれなかった。
「どうしたら良い?」
「どうだろう。」
太陽は沈んでいった。

あっちにも、こっちにも居場所なんてなかった。
それでも僕は歩き続けた。
行くあてはない。
ただただ歩き続けた。
歩いていると、きれいな花が咲いていた。
「ここは僕の場所ですか?」
「ここはわたしたちの場所です。」
「そうですか、残念です。」
「居場所がないの?かわいそうに。よかったら、わたしたちの種を持っていきなさい。」
「ありがとう。きっとどこかに植えるよ。」

歩き続けていると、何もない広場に着いた。
「こここそは、僕の場所だ。まだ誰もいないじゃないか!」
寝転んで、においをかぐ。
これが僕の場所のにおい。
「よかったら、わたしたちを植えてください。きれいな花になりますよ。」
「いやだよ、ここは僕の場所だ。きみたちの場所は他にあるよ。」
「わたしたちはどこにもいけません、あなたが運んでくださらないかぎりは。」
僕は、しかたなく種を植えた。
しばらくすると種は芽を出し、花となった。
見渡す限りの花畑。
「どうです、美しいでしょう。」
「ああ、きっとここはきみたちの場所なんだろう。僕はほかにいくよ。」
「いいえ、ここはあなたの場所。わたしたちはあなたのために咲いているだけ。」
「そんな。僕は何もしていないよ。」
「わたしたちをここまで連れてきてくれた。」
「歩き続けた。ただそれだけさ。」
僕の場所ではなくなった、一面の花畑。
それでも見ていると気分が良かった。

僕が目をつぶって花と遊んでいると、誰かがゆっくりと歩いてくる音がした。
目を開けると、老人が立っていた。
「やぁ、きれいなお花だ。」
「どうもこんにちは。」
「この花はあなたの花かい?」
「いいえ、花たちの花です。」
「そうか、花たちの。」
老人は、ぐるりと花たちを見回すと、僕にちょいと頭をさげてから歩き出した。
「どこに行くんですか?」
「どこまでもさ。」
「良かったら、種を持っていってください。この花たちの種です。」
「ありがとう。きっとどこかに蒔くよ。」
老人はいってしまった。
僕もいつかはここを旅立つだろう。
僕の場所は見つからないかもしれないから、花の種を持っていこう。
僕の場所はなくても、花はただ咲くだろう。
どんな場所であっても。きっと。
ラベル:小説
posted by どらっくす at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月28日

レンガ。

レンガ敷きの歩道を歩く。
規則正しくレンガが並んでいる。
一列に並べたら消えるゲームみたい。
「もしかして。」
少しだけ色の違うレンガを動かした。
同じ色が一列並ぶと、やっぱりレンガは消えた。
どんどんと動かす。
その度にレンガが消えていく。
とうとうほとんどのレンガが消えちゃって、
もう足もとにしか残っていない。
「どうしようかな、消しちゃおうかな。」
少しだけ考えて、やっぱりやめることにした。
「さて、ここからどうやって帰ろう。」
すでに周りには何もなかった。
あるのはただ、足元のレンガだけ。
「全部消えちゃったんだ。」
上を見上げると、空もなくなっていた。
レンガと一緒に空も消えた。
世界はもう、ここにしかない。
仕方がないので足元のレンガも消した。
もしかしたら夢で、何も消えないかもしれないと思ったけど、
やっぱり僕も消えた。
ラベル:小説
posted by どらっくす at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月26日

かっこいいフライパン

雨の降っている日は、どうにも気分も晴れません。
何か良い気晴らしはないかなぁと考えていますと、
ふと「フライパンを買おう」という気分になりました。
さっそく店に入ってみましたが、
なかなか良いフライパンがありません。
どこを見ても、メイドインチャイナ、メイドインコリア。
なかなかメイドインジャパンはないのです。
仕方がないので、別の店に行きました。
ありました。メイドインジャパン。
なるほどメイドインジャパン、値段が二倍です。
「こりゃまいった。」
さらに別の店に行くことにしました。
今度の店には今までにないフライパンが置いてありました。
メイドインフランス。
値段が五倍くらいに跳ね上がりました。
安いものもある、高いものもある。
いったいどれを買ったら良いのか?
もう安くても良い、高くても良い。
一番気に入ったやつにしよう。
最初の店に戻ると、一番安いフライパンを手に取りました。
「コレで良いや、安いし。」
結局は値段か。
いや違う、そうじゃない。
一番安いフライパンを置くと、もう一度店内を良く見てみました。
端っこの方に、青くてかっこいいフライパンが置いてあります。
「これにしよう。」
メイドインコリアでした。こりあいかん。
でも気にいったから買おう。
値段が安いでも高いでもない、メイドインどこでもない。
かっこいいフライパンを買ったのです。
ラベル:小説
posted by どらっくす at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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