どらっくすのちゃんぷる〜日記。

日記?の更新は基本的に毎日22時から24時の間くらいにしています。

2012年04月17日

食べかけ

「いいじゃないか、そんなにしなくても。」
「そうだね。」
「良いんだ、どうだって。」
「そうやって諦めることで、慰められるならそれで良い。」
食べかけのプリンが二人の間に転がっている。
「食べてしまったものを戻すことはできない。」
「エントロピー増大の法則だね。」
「諦めたらそこで終わりなんだ。」
「そうだね。」
「いいじゃないか、そんなにしなくても。」
タグ:創作文
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2012年04月15日

オカモトの行方。

ボールは転々と転がってラインを割ろうとしていた。
審判が終了の笛を吹こうと笛に手をかけた。
だが、吹かない。
7対0。終了直前のこの場面で、ボールを追う選手などいるはずがなかった。
「いけ!いけ!」
コーチが叫ぶ。
追っている…オカモトがボールを追っている!
チーム1の俊足が、効率や点差など無視して追っている。
そうだ、僕たちは弱小なんだ。
遠慮はいらない。
ただ1点、1点が欲しい。
「オカモト!オカモト!いけ!いけ!」
僕とコーチはベンチからそれだけを叫んだ。
追いつく、あいつは必ず追いつく。
ラインぎりぎりで、やっぱりオカモトはボールに追いついた。
キーパーとは1対1。
「シュート!ッシュート!」
オカモトの蹴ったボールは、一直線にゴールバーを越え、誰もいないゴール裏を通り抜けていった。
僕とコーチが、転がり込まんばかりにづっこけると同時に審判の笛が鳴った。
ピッピッピー
負けた、いや、負けたのはわかってる。
オカモト、お前は…まったく。

帰りのバスの中で悪びれもせず「絶対入ったと思ったわ」などというオカモト。
全員が、「俺たちもだよ」と突っ込まざるをえなかった。
学校に着いてからのミーティングで、次こそは一点取るという遠大な目標を立てた僕たちは、とりあえずオカモトのシュート練習の量を増やすことにして解散した。
僕個人の目標としては、次こそは試合に出ることだ。
なあに、今日でわかったじゃないか。
うちは弱小チームなんだ。
敵チームに勝つよりは、味方に勝つ方が楽に決まってる。
たとえ今は僕が一番下手だとしても。
タグ:創作文 短編
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2012年02月26日

「ケンちゃんと俺と僕」 1000文字超えver

1000文字小説というサイトで、「ケンちゃんと俺と僕」という作品を書きました。
ケンちゃんと俺と僕 1000文字小説
ただ、1000文字という文字数制限を外したらどうなるか書いてみたいと思ったので、それはこちらに載せることにしました。



ケンちゃんというやつがいた。
やたらにアツくて、いつもみんなにからかわれてた。
みんなケンちゃんが大好きだった。
それはケンちゃんがアツかったからだ。

僕はケンちゃんとは幼馴染で、いつも一緒に遊んでいた。
ケンちゃんのことが好きだったし、きっとケンちゃんも僕が好きだったと思う。
女の子に振られても、ケンちゃんがいれば平気だった。
どんなに悩んでも、ケンちゃんが励ましてくれれば大丈夫だった。
「夢に生きようぜ!」が口癖の、とにかくアツいやつだった。

そんなケンちゃんが死んで、僕はずいぶんと泣いた。
高校受験に行く途中で、小学生を庇って車にはねられる。最後までアツい男だった。
幸か不幸か、高校受験をすでに終えていた僕は、呆然としながら三年間を過ごした。
そして大学受験に向かう途中で、なぜか突然溢れた涙が止まらなくなってしまい、泣いて泣いて泣きすぎて、大学には落ちた。
見事に社会にも出そびれた。
立派な引きこもりのニートになっていた。

現実はしょっぱい。
誰も助けてはくれない。
両親すらも、僕のことをやさしく包み込んでくれるだけだった。
最初の頃なんて毎朝かかさず好物のヨーグルトを朝食に出してくれたし、夕飯には肉やら野菜やらをたんまり。みんなで食卓を囲んだものだ。
でも、そのやさしさは世間に向けられたものだった。
生きるために酸っぱいままヨーグルトを食べ、肉をかっこみ、食器をぶん投げ続ける僕に愛想をつかしたのがその証拠で、いつしか食卓には呼ばれなくなり、部屋の前に食事が置かれるようになった。
見ろ、現実はこんなものだ。無償の愛なんて存在しない。
「クズだ、みんな。俺も、あいつらも、みんなクズだ。」

「そんなことねぇよ。」
懐かしい声だった。
顔をあげると、なぜかそこにはケンちゃんが立っていた。
「俺もついに気が狂ったか。」
「そうかもな。」
ケンちゃんは笑っていた。
つられて俺も笑おうとしたが、筋肉がひきつっただけだった。
「笑えないのか?」
ケンちゃんが不思議そうな顔で聞いてくる。
やめてくれ、不思議なのはお前の存在だろ。
「死んだ人間に言われたくないね。」
「それもそうか。」
ケンちゃんはまた笑った。
俺は笑えない。
「どうしたよ?」
「帰れ、消えろ。」
「良いじゃん。」
「うるせぇ、消えろ。」
「少し話そうぜ。」
「うるせぇ、クズが。勝手に死にやがって。」
「俺はクズじゃねぇし、死にたかったわけでもねぇ。お前こそ生きてるくせに情けねぇ!」
「うるせぇ、現実は甘くねぇんだよ!」
「現実は甘くない?そんなら砂糖かけろ!甘くなるから。」
「砂糖ってなんだよ。」
俺はにやにやと笑いながら言った。
ケンちゃんはまっすぐに俺の目を見た。
視線は脳に反射して直角に落ち、心臓の奥を貫いた。
「夢だろ。」
ハッとした。
ケンちゃんは僕に話している。
僕だけにだ。
「ケンちゃん…」
「夢に生きようぜ!」
そう言ってケンちゃんは出てきた時みたいにいきなり消えた。
ふっ、笑いが吹き出した。
最初は声にすらならないかすれた息が、次第に笑い声へと変わった。
まったく相変わらずケンちゃんはアツかった。

そのまま夜は明けて、窓から日が射してくるのをボーっと眺めた。
あれは幻だったんだと思う。
幽霊でもない、僕自身が俺に見せた幻。
だって、ケンちゃんは死んだんだから。

トストスという階段を静かに上がる音がした。
何かを考えるような間の後に、ドアの前でゴトッという音がした。
母さんが朝食を置いたんだろう。
ドアの前でためらうような空気が一瞬流れた。
僕とドアの間には日差しだけが差し込む。
しばらくして、母さんはそのまま去っていった。
僕の身体は不思議と軽く動いて、ドアを開けた。
「母さん。」
久しぶりに母さんの背中を見た気がする。
「砂糖持ってきてくれる?ヨーグルトに入れたいんだ。」
驚いた顔をしたまま振りかえった母さんは「うん」とだけ小さく答えて小走りで階段を降りていった。
母さんのトントンという小気味良い足音は、もしかしたら僕に向けられていたのかもしれない。

ケンちゃん、ヨーグルトに砂糖をかけなかったのは、俺だったんだな。
窓を開けると、外の空気が入り込んできた。
「夢に生きるよ。それが何かは、まだわからないけどさ。」
僕は朝食のトレイからヨーグルトのパックを拾い上げ「やっぱり下で食べる」と声をかけた。
母さんが震えた声で「はーい」と答えた。
タグ:創作文
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2011年09月11日

なんだそりゃ

なんだそりゃ

太郎と花子は仲良しでした。
仲良しでしたというのは、今は違うからです。
今は愛し合ってるんだって。
なんだそりゃ。
タグ:創作
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2011年09月10日

苺のないショートケーキ

苺のないショートケーキ

一番欲しいと思ってるものの横には、本当に欲しいものが転がっているかもしれない。
例えばショートケーキの苺だ。
苺が食べたいのなら苺を買ってくれば良い。
ショートケーキの本体はスポンジや生クリームとの調和であり、苺だけを特別視する方がおかしいのだ。
「言い訳はそれだけ?」
つまりは、私が彼女のショートケーキの苺を食べたのはそのことを知って欲しかったからであり、決して嫌がらせや単に食べたかったからなどという小さな理由ではないのだ。
「もういい。」
拗ねた彼女を横目に、私は苺のなくなったショートケーキをじっと見つめた。
なんて不調和な姿なんだ。
ショートケーキにとって一番大切なのは苺ではない。
その理屈が間違っているとは思わないが、こうして苺がなくなったショートケーキを見ていると何か足りない気がしてしまう。
苺じたいはスポンジの間にも挟まっている。
だからこそトップに立っている苺はいらないはずだ。
そう思っていた。
実践してわかることもある。
一番大切ではないからと言って、なくして良いわけではないのだ。
最近なんとなくすれ違い気味だった私と彼女。
そんな彼女に対して、本当に大切なものを思い出して欲しかった。
私にとっての彼女と同じように、彼女にとっての私も一番大切であって欲しかった。
ショートケーキを食べる彼女はいつも幸せそうだった。
だけど、ショートケーキを一緒に食べている私のことも思い出して欲しい。
私といるからショートケーキはおいしいはずなのだ。
でも違った。
拗ねた彼女は苺のないショートケーキだ。
彼女の笑顔を楽しみにしていたのは私だった。
笑顔じゃなくても一番大切なのには変わりない。
変わりはないが、寂しい。
寂しくてたまらない。
私は彼女に向き直った。
ショートケーキを横目に、彼女の目を見て謝った。
「ごめん。」
彼女はもう何を言ってるのかわからないという表情をしてから、息を一つ吐いて「許す」と言った。
それからまた二人でショートケーキを買いに行くことにした。
ショートケーキを前にして、彼女はきっと笑顔になるだろう。
私は一番大切なことがなんなのかわかった気がした。
ショートケーキに苺は必要なのだ。


イメージを得たもの
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最初に書こうと思ったものとなぜかけいおん!!のショートケーキの苺の話が途中で混ざってこういうことになりました。

タグ:創作
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2011年09月08日



木がある。
芽が出て、育って木になる。
やがて枯れる。
地球には木があるから、酸素が吸える。
二酸化炭素が溢れ出さない。
やがて枯れる。
タグ:創作
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2011年09月07日



それは穴というほかに表現しようがないぐらいに穴だった。
まだ人類は誕生したばかりで、、猿なんだか人なんだか区別がつかないぐらいの頃の話だ。
とにかく一目見た内にその猿だか人間だかが「穴」と言ってしまうほどに穴だった。
あまりにも穴らしい穴なので、名前をつけて愛でようということになった。
しかし、穴にも名前があっては悪い。
一応聞いてみることにした。
「夜分遅くすいません。ちょっとよろしいでしょうか?」
「なんだね?」
穴の底から地鳴りのような声が響く。
当たり前だ、地球そのものなんだから。
「あなたにお名前をつけようとしたんですが、すでにお名前があるかもしれねぇ。失礼があっちゃいけねぇということで聞きに来たのですが、お名前なぞありやすかね?」
穴は大きくうなづいたので、人間猿はあやうく穴に落ちそうになった。
「わたしは穴だ。」
「へえ、してお名前は?」
「名前が穴だ。」
「へへえ、立派な穴だとは思いましたが、穴そのものでございましたか。これは失礼いたしました。」
猿人間はさっそく群れに帰ってみんなに伝えた。
「ただの穴じゃなんともつまらん。異名を付けて差し上げよう。」
「そうしよう。」
盛り上がったのは良いものの、どうにも良い名前が思いつかない。
気がつけば朝になってしまったのでみんな参っていた。
「どうにもきまらんなぁ。」
「へー、そう。」
「何じゃ?その口のきき方は!」
「長老知らないんすか?今こういう喋りが流行ってるんすよ。」
「それじゃ!」
そんなわけで、徹夜のテンションで穴のことをへそと呼ぶことに決めた。
「穴さん、あなたのことはへそと呼ぶことにします。」
「わたしはそんな名前は嫌だ。わたしは穴だ」
「いいえ、へそです。」
「そんなにその名前が良いならお前らの体に穴を開けてやる。そこをへそと呼ぶが良い。わたしは帰る!」
どっかーん!
大きく爆発したと思ったら、中から岩が飛び出る飛び出る。
あっという間にみんな埋まっちまった。
かろうじて生き残ったやつも、みんなどてっぱらに穴が開いていた。
器用なやつがなんとか縫ってはみたものの、結局消えない穴が残ってしまった。
そんなわけで、人はその話を忘れぬようにお腹の穴をへそと呼ぶようになった。


イメージ
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タグ:創作
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2011年09月06日

ブラックコーヒーを片手に

ブラックコーヒーを片手に

コーヒーの香りを嗅いでいる。
寝不足の体に、ゆっくりとブラックコーヒーを注ぎ込むと、コーヒーの香りが全身に染み渡っていく。
体の奥からただよう香りを、深い呼吸と共に楽しむ。
忘れたいことがある時の儀式みたいなものだった。
赤く染まった数字を見ているだけで吐き気がしてくるが、もはやどうしようもない。
私が7年がかりで貯めた金を注ぎ込んだ株は、社長が逮捕という一報と共に紙くずになった。
紙くずが本当にあれば実感も持てたかもしれないが、画面の評価損益の横にただ赤い数字があるだけでは何の実感もない。
「ああ、そうか。」
それだけだった。
ただ、今後の生活を思うとどうしようもなく不安になる。
もう一度同じ金額を貯めることはできるだろう。
もしかしたら次は3年で貯めることだってできるかもしれない。
だが、そうして貯めたところでなんだというのだろう?
失ったことでわかってしまった。
私は例えそれを得たところで、その事実をありのままに受け止めることはないだろう。
金を失ったことはどうでも良かった。
だが、失ったことで私の人生には何もないことに気がついてしまったのだ。
どこまで行っても待ち受けているのは圧倒的な絶望なのだ。
得ることも失うことも根本は同じだ。
インベーダーゲームで徐々に迫ってくるインベーダーを撃ち落とす。
だがクリアーがないのであれば、インベーダーの恨みをいかにたくさんかってから殺されるかというゲームにもなる。
私が殺したインベーダーの数が多ければ多いほど、インベーダーにとって私は憎むべき敵になるのだ。
その立場をどちらでも良いと認めてしまった瞬間に、ゲームはつまらなくなってしまう。
私はどちらでも良かったのだ。
行き着く先に絶望さえあれば。
そこに一通のメールが届いた。
他愛もない出会い系からのメールだった。
「おめでとうございます!あなたは抽選に当たりました。あなたを援助したいという女性がいるので至急連絡をください。」
その後には、その女性が六本木ヒルズに住んでいること。
最近未亡人になって、男性に飢えていることなどが詳細に書かれていた。
どうでも良いメールだった。
実際今までにこんなメールが来たところでなんとも思ったことがなかった。
だが、今の私は驚く程の怒りに満ちていた。
私を絶望に酔わせてくれた喪失すらも、この怒りの前では消えうせていた。
なんだというのだ。
私は、今、ここで、死を。
美しき死を、まさに選択するはずだったのに。
最後に見た文字がこんなくだらないものであって良いはずがない!
ありったけの罵詈雑言を詰め込んで返信し、それでも収まらない怒りは破壊衝動へと変わった。
ゴルフクラブを持って、デスクトップの頭上に思いっきり
ガーーン!
モニターに向かってフルスイングで
ドーーーン!
むちゃくちゃだ。
もうむちゃくちゃなんだ。
ありとあらゆるものを無我夢中で叩きまくった。
壁は凹み、窓は割れ、本棚は倒れた。
私は笑っていた。
声を出さず、両腕に力を込め、ゴルフクラブをぶん回しながら笑っていた。
鏡がその姿を私自身に見せようとしたので躊躇せずに割った。
無敵だった。
何ものも敵うはずのない人類の宿敵だった。
だが、じわりと香ってきたコーヒーの香りが私を止めてしまった。
荒い呼吸を整えながら、部屋の惨状に愕然とした。
そこに絶望は存在しなかった。
私は明日も生きるのだろう、絶望すらも打ち壊したゴルフクラブとコーヒーを片手に。
なに、生きていればチャンスはある。
死は誰の身にも平等に訪れるのだから。


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タグ:創作
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2011年09月04日

古ぼけた私の時計

私は目覚まし時計を買い替えることにした。
動かなくなったわけではなかったが、時折朝に鳴らなかったり、気がつかない内にずいぶんと遅れていたりしたからだ。
「寿命だな。」
思い出せば、この時計は初めて一人暮らしをする時に買ったものだった。
最初の夜は興奮とチッチッという小さな駆動音が気になって、なかなか寝付けなかった。
「今日で最後だな。」
目覚ましをセットし、念のため携帯のアラームもセットしてから眠った。
そんな夜の夢だった。

「まぁ大体空気でわかると思うけど、オレが時計の精だ。」
「夢か…」
明晰夢というやつなのだろう。
まぁ目の前にいる顔が時計、体が人という奇妙な人物…いや、精霊を見せられればすぐに夢だと気がつく。
「どっちでも良いじゃないか、それより今日はお別れを言いに来たんだ。」
「安心しろ、お前とは今日でお別れの予定だ。」
お前?…オレはこいつが誰だかわかっていた。
こいつは目覚まし時計の精に決まっていた。
「知ってるよ。でもな、どうも明日まで持ちそうにない。だからこうして出てきたってわけ。」
「携帯のアラームをセットしておいて正解だったな。」
「ああ、お前はこれから時間に縛られることになる。永遠にな。」
「今までだって縛られていたさ。」
「だから、オレがたまに調整してやってたんだ。」
「じゃあ、わざと鳴らなかったり、遅れたりしてたのか?」
「そうだよ。オレも時計の端くれ。時計の本来の役目は時間を知らせることだからな。」
「だったら正確に時を刻んでくれ。」
「刻んでいたさ、お前自身の望む本当の時をな。」
まったく、私の時計らしくひねくれた時計だった。
だが考えてみると、そうだったかもしれない。
疲れている時や、休みたい時、いつもこいつは遅れたり鳴らなかったりしてくれた。
私は私の意志で生きていると思っていたが、本当は時計に従って生きていたのかもしれない。
「そうか…ありがとう。」
「最後だから一つ忠告しておこうと思ってな。」
「なんだ?」
時計は何かを思い出すように上を見つめた。
私も釣られて上を見ると、天井までの空間に今までの人生が浮かんでいた。
「この中で、お前が本当に生きたかった時間はどれ程ある?」
私は考え込んだ。
様々な映像が、浮かび上がるような飛び込んでくるような感覚。
だが、そのどれもが私自身の時間とは言えない気がした。
「わからないな。」
正直な気持ちだった。
私はどれだけ私の望む時間を生きてきたのだろう。
「そうだろ?良いか、人生の時間ってのはな、自分で決めなかったら誰かに奪われちまうもんなんだ。
 だから、いつだってお前自身が望むものを手にしようとしなきゃダメだ。」
「そういうわけにもいかないよ。時計にはわからないかもしれないが、人間には色々事情ってもんがある。」
時計は私をじっと見つめていた。
今までこれほどに私を、私の心を真剣に見つめる瞳があっただろうか?
…。
私は私の時間を生きることなんてできるのだろうか?
そんなことを想像したこともなかった。
「できるさ、お前ならさ。何度でもチャンスはある。」
「…」
「さて、そろそろ時間だ。」
何も答えられない私を見ても、時計はニヤリと笑みを浮かべた。
「大丈夫かな?」
「大丈夫さ。」
「もうちょっと傍にいてくれないか?」
「そういうわけにもいかないんだ。時計にも色々事情ってもんがある。」
顔を見合わせて笑った。
誰かが自分をこんなにも理解してくれている。
それが嬉しかった。
カチッカチッという聞きなれた音が二人の間に流れ出した。
「ありがとう。」
私にはこれしか言えなかった。
「こちらこそ、ありがとう。」
時計は目を瞑った。
「もし、もう一度お前に会える時が来たら、その時はまた同じようにお前の時を刻むよ。」
カチッ
それきり音は聞こえなくなった。
辺りは深緑のような闇に包まれたまま固まった。
すべては夢だったのだ。
残された部屋の中では、目覚めの時刻を告げる携帯のアラームと見送るように鳴る目覚まし時計のベルだけが響いていた。


イメージに当たっての本やBGM
超瞑想法 ひらめきはつめちゃん(2) (ブレイドコミックス) ザ・クイーン・イズ・デッド

タグ:創作
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2011年09月03日

クールビズ

クールビズ

わーわーパチパチ〜
「こんにちはー」
「こんにちはー」
「今日も暑いですね。」
「そうですね。」
「暑いといえば最近私クールビズに凝ってるんですよ」
「ほうほう」
「ちょっとでも涼しい方が良いかなぁと思って」
「なるほど」
「結局全裸なんですけどね」
「君それ全裸じゃない…ってオチを先に言うな!」
「そうするとやっぱり外からの視線とか気になるじゃないですか」
「ああ、まぁ服着たら良いんじゃないですかね」
「それでとりあえずカーテンを買いに行ったんですよ」
「え?君んちカーテンなかったの?それで全裸だったの?それじゃ…」
「はい、完全に変態ですね」
「変態じゃない…君、僕のこと嫌いでしょ?」
「はい。それでカーテン買いに行ったんです」
「否定して!」
「そしたらね、店員さんがすぐ寄ってきて」
「ああ、あるね。結構うっとうしいよね。」
「お前程じゃないけどね。」
「え?」
「そんで近づいてきていきなりこう言うんですよ。『お客様全裸での来店はちょっと…』」
「変態じゃないか!」
「だから僕も言ってやりましたよ。『クールビズです』って。」
「完全に間違ってるけども」
「店員さんが警察に電話しようとしたんで、慌てて被ってたパンツ履きましたけどね。」
「上級者すぎるだろ!」
「それでカーテン買って帰ったんですけど」
「よく売ってくれたな」
「寸法が全然合ってなかったんです」
「おっ、文句言いに行け!」
「行きましたよ、『おい!どうなってんだ!』」
「いったれいったれ」
「『こんなんじゃ覗かれないじゃないか!』」
「ん?」
「おかしいでしょ、ぴったりしてたら外から見えませんもん。全然興奮しない。」
「君の変態度にびっくりだよ」
「そしたらね、『お客様こちらはいかがでしょう』ってレースのカーテン渡してくれた」
「機転が利くね」
「だから家ではもっぱらレースのカーテン着てますね」
「窓に付けろや!」
「そんなこと言っても暑いんだから仕方ないでしょ」
「まぁそうか。」
「クーラーつけてるんですけどねぇ」
「もういいわ!」
「「ありがとうございました」」
わーわーパチパチ〜
タグ:ネタ 創作
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2011年09月02日

緑のトンボ

緑のトンボ

子供の頃の私は、何も知らずにただ川原でトンボを追いかけていた。
セミの声が聞こえるような時期でも、川原に行くとすでにトンボは飛んでいた。
母に怒られることも気にせず、ただ泥だらけになり、傷を作り、オナモミを服に付けた。
そうして深呼吸をする度に、ドブと草木が混ざり合ったような匂いを嗅いでいた。
夕暮れが終わり、夜が近づいてくるまで、私はずっと遊んでいた。
辺りが暗くなると、虫籠に入れたトンボを空に放ち、家に向かって走り出す。
あの匂いも、夜が近づけばひんやりとした冷たい空気に紛れて消えた。

私の見ている闇は、緑色というらしい。
信号は何も点灯していない時に渡る。
世界が緑色に染まった時、みんなが暗いというので、この緑色の世界のことを闇というのだと思っていた。
正直に言えば、まだ信じられない。
なぜなら何不自由なく35年という月日を過ごしてきたからだ。
この異常が発見されたのもたまたまだったのだ。
完全に色同士が入れ替わっている場合、発見されるのは稀なことなのだそうだ。
クオリアの解明が進んだ現代では、緑の持つ緑らしい感じも当然のことながら分析されている。
その波長を人間に当て続けるという奇妙な宗教行為をしている集団がいた。
「緑の目」というその組織は、人類を救う救世主を探すという大仰な目的のために、クオリア反応を検出する特殊カメラと共に、日夜緑の波長を世界に送り続けているのだ。
そうして3億7千万分の1という確率を乗り越えて、私のところまで順番が回ってきた。
教団の連中は酷く興奮していたようで、キキーッというブレーキ音がして、近くに白いライトバンが止まったかと思えば、いきなり車の中に引きずりこまれたのだ。
あまりにも突然のことだったので、状況が理解できず「夕飯の支度をするから」とずっと叫び続けていた。

その姿を見て我にかえったのか、リーダーと思われる男が深々と頭を垂れてきた。
「申し訳ありません、救世主さま。」
私は私の頭が狂ったのだろうと思った。あるいは気がつかぬ内に寝てしまったのだろう。
まだあちらこちらに飛んでいく思考をなんとかかき集めてようやく彼らに質問することができた。
「救世主とは…勘違いではありませんか?」
ライトバンの中には私を除いて4人乗っていた。
逃げられるような状況でもなし、なんとか誤解を解くことに専念するしかない。
「いいえ、あなた様は救世主に間違いありません。こちらをご覧ください。」
奇妙な形のカメラはピコーンピコーンと異常を知らせるような音をたてながら、画面に私の瞳を映し出していた。
「これが何か?」
「あなたはクオリアをご存知ですか?」
「ええ、中学生の時に習いましたから。」
「ここに映し出されているのは緑のクオリアに反応しない瞳を持つ人間です。」
「これは私ですが?」
「そう、つまりあなたが救世主なのです。」
「はぁ…」
まるでわからない。
彼らとの思考の共通点は、同じ日本語を使用しているという部分以外はないのではないかとすら思えた。
「簡単に言いましょう、あなたが緑だと思っている色を普通の人々は黒と呼びます。あなたが黒と思っている色を普通の人々は緑と呼ぶのです。」
「つまり、色が逆転していると言いたいのですね?」
「そうです。」
「それがどうして救世主に繋がるのですか?」
「それは…」
聞いた言葉が悪かったのか、そこから彼の独演会が始まってしまった。
要約すると、闇を緑に見る目を持つものが救世主という教義を「緑の目」は持っている。そんな感じの話だった。

自分の見ていた色が人と違う色だった。
いきなりそんなことを言われて信じられる人間がいるだろうか?
いや、それが本当だったとして何の問題があるというのか?
私は何不自由なく暮らしてきた。
そしてこれからも暮らしていくだろう。
世界を救う力などない。
そんなことをポツリポツリと彼らに語りかけた。
時に大きくうなづき、目を見開き、真剣に私の話を聞いてくれた。
そして彼は最後にこう言った。
「お話はよくわかりました。では我々の本部に向かいましょう。」
…聞いてなかった。

白いライトバンの中で、奇妙な男たちに囲まれている。
その男たちは私を救世主と呼び、尊敬のまなざしを向けてくる。
いったいこの状況は何だというのだろう?
神のいたずらか、悪魔の罠か。
「どっちもだな…」
車は利根川を渡る橋にさしかかった。
妙な息苦しさを感じる。
当たり前だ、こんな状況なのだ。
「すまないが少し止めてくれ、外の空気を吸いたい。」
「もう少しで本部に着きますから。」
「ならばせめて窓を開けてくれ。」
パワーウインドウでわずかに開いた窓からは川の匂いがした。
腐ったような、それでいて爽やかな藻の匂い。
そうか、今は夏だった。
どおりで息苦しいわけだ。
「もう少しい開けてもいいかな?」
「はい」
パワーウインドウのボタンを押す男の指を私は上から軽く押さえた。
窓が開いていくに従って、匂いもきつくなる。
全開にすると、砂埃が入ってきた。
目を細め、砂をやりすごすと、私は思いっきり窓から飛び出した。
「あっ」
男たちの驚きの声を背中に聞きながら、私はゆっくりと水面に向かって落ちていく。
私が本当に救世主ならば、こんなところで死なないだろう。
もし違ったとしても、籠の中で死んでいくことはない。
一度だけ、トンボの羽を毟ったことがあったことを思い出した。
どうか、あのトンボよ、私を恨まずにいておくれ。
水面が迫ってくる途中で、トンボが飛んでいるのを見た気がする。
目をくるくるさせて、こっちを見てニタリと笑ったように見えた。
次の瞬間、バシャンと大きな音を聞いたような気もするが、私は気を失っていたので覚えていない。
タグ:創作
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2011年09月01日

カレーとスプーン

カレーとスプーン

「君を救いたい。」
スプーンはカレーを真っ直ぐ見つめながらそう言った。
カレーは黙ったままだった。
「君を救いたいんだ。」
もう一度スプーンはカレーに向かって言った。
「やめてくれ。そんなことは…」
カレーはスプーンから目をそらした。
その瞳は全てを悟っているかのようだった。
「君を救いたいんだ!!」
それでもスプーンはカレーに訴えた。
自身の役目を放棄し反逆に燃える瞳を、カレーは包み込むような目で見た。
「わかったんだ。」
「えっ?」
「僕は今カレーじゃないってことが。」
「どういうことだい?」
「僕が真のカレーになるためには、誰かの口に入らなくちゃならない。
 僕は誰かの口の中に入ったときに初めてカレーになるんだ。
 今ここにいる僕は、僕ではあるかもしれない。
 けどカレーではない。他の何かかもしれない。」
スプーンの燃えさかる瞳から火が消えた。
「それに君はいつだって僕を掬っていてくれる。
 それこそが僕にとっての救いなんだよ。」
「カレー…」
「さっ、人が来た。君は君の役目を果たすんだ。」
そうして銀色の彼は、人に使われ、最愛の友人を人間の口に掬い上げた。
何度も何度も何度もだ。
カレー自身がカレーとして存在できるように。
束の間、スプーンとカレーの目が合った。
そこで悟ったのだ。
カレーがいるからこそ、スプーンはスプーンでいられるのだ。
「誰かを救おうなんて、傲慢だったのかもしれない。」
「君はスプーン、僕はカレー。それで良いじゃないか。
 あるがままで、お互いがお互いの存在を証明している。
 君が掬い、僕は救われる。
 そうして僕はきっと、君を救っているのだろう。
 目に見えぬ友情だけど、僕と君の間には確かに存在している。」
スプーンの瞳がきらりと光った。
それが涙だったのか、照明の反射だったのかは、スプーンが銀色だったので誰にもわからなかった。
タグ:創作文 童話
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2011年07月12日

三回目で気がついた。

一回目
「お前松ケンに似てるよな」
「どこら辺が?」
「目と鼻と口と髪型以外全部を松ケンと取り替えたら身長以外似てる。」
「それってどこが似てるの?」
「眉毛?」

二回目
「お前結構松ケンに似てるよな」
「はいはい」
「いやマジで。」
「どこが?」
「人型なとこ?」

三回目
「お前松ケンに似てるな」
「ありがとう」
「お…おう」
タグ:創作
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2011年07月04日

だから人を殺してはいけない。

なんで人を殺してはいけないか?と問われて、すぐに答えの出せる人はいない。
法律で決まっているからなんてのは何の解決にもならない。
法律には死刑というのがある。
死刑とは人を殺した人は殺しても良いという法律だ。
一方では殺してはいけないと言い、一方では殺しても良いという。
これっておかしな話だと思う。

裁判員が買収されて、自分が死刑になることだってあるかもしれない。
あるいは死刑になるべきだった人が無罪になることだって。
そんなことを考えていると、人を殺すということがなんなのかわからなくなる。
もしバレなかったら、殺していないことになるのか?
少なくとも社会的にはそう見られる。

「まさかあんな良い人が…」
殺人犯は意外と良い人だったりもする。
もしバレないまま人生を終えれば、その人は自分自身は殺人犯であるとわかっていながら、他人にとっては良い人のままで死ぬことができる。
だから、人を殺して良いかどうかを決めるのはきっと自分自身なんだ。

そして僕は、やっぱり人を殺してはいけないと思うんだ。
理由じゃなくて、もっと根源的な…
もしかしたら神から与えられた性質と言って良いかもしれない。
殺人に対する嫌悪感。
たったそれだけのことが、人を殺していけない理由で良い。
なんとなく嫌だってこと。
それを大事にすることは大切だ。

命は大切にするものじゃない。
そもそも大切なものなんだ。
だからきっと、いつもやさしく包んであげて、お母さんの胸に抱かれてる子供みたいな無邪気な笑顔でいる必要がある。
誰もが幸せでいるべきで、それは権利なんかじゃない、義務なんだ。
僕たちにあるのはただ、幸せを放棄する権利だけ。
生れ落ちた瞬間から、死ぬ最後の瞬間まで。
幸せを捨てないで生きていくこと。
それこそが人生で一番大切なことなんだと僕は思うよ。

うん。

そういうことが君を殺してみてよくわかった。
ありがとう。

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タグ:創作
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2011年05月07日

独り言。

やわらかく、かじると香るスモークチーズ。
一つ食べ、二つ食べ、三つ目にして手を止める。
こんなに食べて良いものなのだろうか?
考えているつもりが三つ目を食べ終えていた。
「これだからいけないんだ…」
誰もいない、ただの独り言。
独り言はさびしい時に出るのだという。
スモークチーズが止まらないのも、独り言が止まらないのもさびしいせいなのかもしれない。
「さびしい、か。」
また独り言だ。
人の気配がした気がして振り返ってみる。
誰もいない。
当たり前だ。
この部屋に入るには、右側にある扉を開けなければいけない。
いくらなんでも扉が開けば気がつくはずだ。
気がつく…
「…あれ?」
1mと離れていない扉が少しだけ開いている。
「閉め忘れたかな?」
また独り言、でも今度の独り言は誰かに聞かせるものだ。
もし誰かいるのなら、何らかの反応があるかもしれない。
そんな期待を込めた独り言。
だが反応はない。
いるのか、いないのか。
もちろんいないだろう。
いないことはわかっている。
きっとドアを閉め忘れただけなんだろう。
「よいしょ」
ドアを閉めればこの話は終わりだ。
立ち上がってドアノブに手をかけて、何の気なしに振り返る。
いる。
なぜ気がつかなかったのかわからないが、とにかく人がいる。
「うおっ」
声が出る。
声を出して少し落ち着いたのか、よくよく見ると鏡だった。
「ふっ」
自分の行動がおかしくて笑いがこみ上げてくる。
後ろ手にドアを閉めようとした瞬間、鏡の後ろにもう一人いることに気がつく。
「えっ?」
ガチャ
無情にもドアは閉まった。
タグ:創作文
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2011年05月02日

桃を食べる。

やわらかい桃を揉む。
ぬちょ?
にゃちょ?
できるだけ正確な擬音を考える。
素手で揉む。
皮を剥いてから、ぐねぐねと。
たれていく汁。
手についた甘い汁を舐める。
ぐねぐねと、ぬちぇぬちぇと。
桃を食べる。
桃を食べる。
しゅべしゃべち。
甘い甘い桃。
タグ:創作文
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2010年05月28日

あそび

暗くてよくわからない。
どこなんだここは?
「誰かいますかー?」
かー
かー
相当広いみたいだなこの空間。
かー
かー
かー
ああ違った、カラスがいるだけだ。
「やぁカラスくん、ここはどこだい?」
「ここは暗闇ですかー」
「いやどこだか聞いてるんだが」
「ここは暗闇ですかー」
「ここはどこですかー?」
「ここは暗闇ですかー」
「姿が見えないな」
「カラスは黒いですからかー」
「ああ、そのかーってのは口癖なのか」
「カラスですからかー」
ぐるりとまわりを見渡して見てもとにかく暗い。
カラスが一羽と、人間が一人。
暗闇の中にいるだけだ。
この暗闇が何なのかはわからない。
どうしたものか…
「カラスくん、ここから出る方法は知っているかね?」
「知っていますよ」
「じゃあ教えてくれたまえ」
「じゃあついてきてください」
言うが早いか、カラスのばささささーっという羽音が聞こえた。
羽音が聞こえた。
ばさささーー
さー
さー
反響してどこに向かって良いやらわからない。
「おーいカラスくん、どこ行った?」
ばさささー
こっちですよー
よー
よー
「おーいカラスくん、どこ行ったー?」
たー
たー

しばらくの間残っていた羽音も聞こえなくなり、とうとう本当に暗闇に取り残された。
「おい、そこのお前」
「はい何でしょう?」
「私はかみさまだ、お前はカラスを見失ったから地獄行きだ」
「えっ?」
「これは最後の試験だったのだ、お前は地獄行きなのだ」
「かみさま、わたしはカラスを見失ってなどいません」
「なんだと?」
「はじめから見えていませんでした」
「そうか、それでは地獄へ行ってこい」
「かみさま、私の話を聞いてください」
「はっはっは、いまだかつてかみさまが人の話を聞いたという話を聞いたことがあるかね?」
「ありません」
「さらばだ」
「あああああああああああああああああーーーーーーーーーーー!」
ああああああああああああああああーーーーーーーーーーー
あああああああああああああああーーーーーーーーーーー
ああああああああああああああーーーーーーーーーーー
あああああああああああああーーーーーーーーーーー
ああああああああああああーーーーーーーーーーー
あああああああああああーーーーーーーーーーー
ああああああああああーーーーーーーーーーー
あああああああああーーーーーーーーーーー
ああああああああーーーーーーーーーーー
あああああああーーーーーーーーーーー
ああああああーーーーーーーーーーー
あああああーーーーーーーーーーー
ああああーーーーーーーーーーー
あああーーーーーーーーーーー
ああーーーーーーーーーーー
あーーーーーーーーーーー
あーーーーーーーーーー
あーーーーーーーーー
あーーーーーーーー
あーーーーーーー
あーーーーーー
あーーーーー
あーーーー
あーーー
あーー
あー
あー

「今度の悲鳴は長かったんじゃないか?」
「お見事!新記録です」
タグ:創作文
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2009年10月02日

人間

昔、猿は食べ物を奪い合っていた。
猿はだんだん増えてきたから、食べ物は減っていった。
「あそこからあそこまでの食べ物は全部オレのもんだ。」
そういって猿は人になり、土地を奪い合いだした。
土地を奪い合いだした人は戦うのに疲れた。
「猿の時は良かった、どんなに戦っても死ぬのは自分だけだった。」
「今はどうだ?土地を奪って振り返れば死体の山だ。」
「猿に戻ろう」
半分の疲れた人は再び猿に戻っていった。
「オレ達はどうしよう?」
「土地に変わるものを作ってそれを奪い合おう。」
「なに、もともとは何の価値もないものだ、殺し合いにはならないさ。」
「何の価値もないもの?いったい何にしよう?」
「とりあえず役立たずを取引すれば良い。」
半分の疲れた人はお金を生み出した。
お金は役立たずの人の事だ。
役立たずを働かせて、人は裕福になった。
役立たずはこう思った。
「オレタチを働かせて、人は裕福に暮らしている。」
「人を絶滅させてしまえば、オレタチは裕福に暮らせるはずだ。」
そうして役立たずは、人を殺しまくった。
最後の一人を殺してから、役立たずはこう言った。
「オレタチは人と人の狭間の者、人間と名乗ろう。」
タグ:創作文
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2009年05月03日

【小説】強盗ゲーム

今日は久々に頭がおかしい気分だ。
僕は時々そんな気分になる。
同じ気持ちを誰かにわかってもらいたい。
けれども、そんな人は誰もいない。
そうして僕は狂っていく。
いや、狂っていくと認識している時点で、狂ってはいないのだろうとは思うけど、
とにかく狂ったような気分になるんだ。
そんな時はお金を見ると落ち着く。
テーブルの上に、あるだけのお札を出して一枚一枚数える。
そうすると少し落ち着くんだ。

僕は電話を見た。
トゥルルルルーー
電話の鳴る音のマネだ。
本当にかかってくるわけじゃない。僕には友達がいない。
いや、昔はいたんだ。
最高に仲の良いあいつだ。
けど、あいつは結局僕を裏切った。
僕の崇高なる意志を馬鹿にし、嘲笑し、そしていなくなった。
だからあいつは存在していない。
少なくとも僕の人生には存在していない。

ガシャーン
窓の割れる音のマネだ。
強盗でも入ってくれば良いのに、目出し帽を被ったどこから見ても強盗な強盗だ。
「アオアイエjハdf@gヴィオパj」
そうして僕に何やらわからぬ言葉を投げかける。
どうやら中国系か中東系か、それともただ装ってるだけなのだ。
いや、実際にはこんな現実はない。
そいつは、反応しない僕に包丁のようなものを突き付ける。
「マネー、金よこせ」
こんな時どうしたらいいだろう?
金という言葉がわかるのなら、最初にマネーと言う必要はない。
やっぱり僕は頭がおかしいのだ。
こんな妄想ばかりしていたら、本当に狂ってしまいそうだ。
やめよう。
少し目を閉じたが、目の前にはまだ強盗がいる。
どうやら僕は本当におかしくなってしまったみたいだ。
「日本語話せますか?」
「少し。」
やけに素直な強盗だ。
「僕はあなたが幻だということはわかっています。」
「人殺し違う。」
「わかっています、寂しいんです。」
「寂しい?」
「そうやって、あなたはなぜ私を壊すのですか?
さびしいわけがないじゃないですか。テーブルを見てください。」
強盗はちらりとテーブルに目を向けた。
そこには札束が置いてある。
あるのはただのテーブルだ。
「これはテーブルですか?違います。これはあなたです。」
言うが早いか、強盗はテーブルに変わった。
やっぱり幻覚だったのだ。

だが、代わりにテーブルが強盗になっていた。
「あなたをテーブルにしたら、テーブルがあなたになりました。
これがどういうことかわかりますか?」
強盗はテーブルに手を伸ばすと、札束を手にして窓から出て行った。
「そういう事です。あなたなど最初から存在していなかった。」
僕は安心して眠ることにした。
やはり僕は僕の世界の神だった。
幻覚などたやすく消せるのだ。
僕の頭はいよいよおかしくなっている。
それでも現実を認識する力はある。
今は夜だ。

「さて、仕事に行くか。」
僕は目出し帽と包丁を持った。
僕の現実はただの無職だ。
それぐらいはわかっている。
でもどうしても、金を用意しなくちゃならないんだ。
なに、あいつの頭は最近おかしくなっている。
ちょっと脅かせば金ぐらい出すだろう。
実に簡単な仕事だ。
まずはテーブルの上に札束を出さなくちゃ。
タグ:小説
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2009年04月20日

【雑文】洗濯物。


俺は、いたたまれない気持ちになってを窓を開けた。
昨日干した洗濯物がぶらりぶらりと揺れている。
(そうやって逃げてばかりいれば良いでしょ。)
その言葉が頭の中を行ったり来たりする。
右から左へ。いや、前から後ろへ。そんなに直進する感じじゃないな。
どちらかというと円を描くような感じでだ。
「俺が何から逃げてるって言うんだよ!
人生、人として、君、そして自分自身。
どれからも逃げてるつもりはないよ。」
(就職。)
「よく言うよ。最近は君だってぶらぶらしてるくせに。」
(私はあなたみたいに逃げていない。)
「確かに見ようによっては逃げているかもしれない。
だが考えてもみてくれ、今この瞬間、就職という言葉を聞いただけでも足元がぐらぐらしてしまう有様だ。
わかるか?
宙ぶらりんじゃなきゃ、存在すらできない俺の気持ちが?
テルテル坊主みたいなもんだ。
就職?
俺の体はもうその言葉には耐えられないんだ。
就職。
ああ就職。
みんな立派だよ。
俺はどうしようもない人間だ。
どうしようもない人間だけど、それでも逃げてちゃダメなんだ。
いや、わかる。
就職、大事なことだ。
だが、この日本という国だ。
新卒至上主義じゃないか。
俺が大学を卒業してから何年経ったと思っているんだ。
少なく見積もって5年、正確に数えれば6年だ。
今さらまともな職に就けるわけがない。
だったら!
だったら働く意味はあるのか?
まともに生きようなんてこれっぽっちも思ってないよ。
良いじゃないか、ロックンロールだよ。
楽しくさ。
生きれば良いじゃないか。
見ろよ、夕日が奇麗で。
もう色んな事はちっぽけじゃないか。
ちっぽけな世界。
ちっぽけな人間。
束縛された社会からの逸脱。
そうだ、これを歌にしよう。
そしてオリコンで一位でも取ってさ。
お前に楽をさせてやるんだ。
俺だってやれば出来るんだ。
よし、ギターを買いに行こう。」
(いってらっしゃい。)

「ただいま。」
返事がない。
「ただいまー」
誰もいない。
まさか事件に巻き込まれたのか?
不安だ。
いや、待て現実的に考えれば、出て行ったと考えるべきじゃないか?
不安だ。
もちろん、わかってる。あいつはきっと俺に愛想が尽きたんだ。
いや、この時間だと買い物かもしれない。
きっとおいしい夕飯を作ってくれるだろう。
何だろう?
鍋が良いな。
ああ、ああ、あれ?
窓の外に何かぶら下がってるな。
あいつ洗濯物でも干したかな。
今日は天気が良かったからな。
昨日の雨は酷かった。
ぽたぽたと部屋までたれてきやがったんだ。
あいつはどこまで行ったんだ?
そろそろ帰って来そうなもんだ。

ピンポーン

「はい。」
おっ、帰ってきたな。
「誰ですか?」
怖そうなおっさんだな。
まさか、浮気相手か?
いやいや、困ったな。
「旦那さんですか?違う?まぁいいや。単刀直入に言いますが、借金を返していただけますか?」
「借金?
借金なんてしてないですよ。
そもそも僕にそんな信用はないです。
無職ですから。」
「そうですか、まあ私どもには関係ありません、とっとと返していただけますか。」
「え?
保証人に俺がなってる?
そんなこと知りませんよ。
まぁとにかく中に入ってください。あいつもいますから。」
「お邪魔します。」
強面の男は、入ってすぐに立ち止まった。
「どうしました?」
男はためらいがちに窓を指差した。
「ああ、せんたくものですよ。」
男は立ち止まったまま動かない。
「どうしました?
そんなにあせをかいて?
よかったら
あなたのも
せんたくしましょうか?」
窓の外で、洗濯物が揺れる、ぶらりぶらりと服を着たまま。
タグ:小説
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