どらっくすのちゃんぷる〜日記。

日記?の更新は基本的に毎日22時から24時の間くらいにしています。

2008年12月15日

エスパーミルの退屈しのぎ 第二話「告白」

自分がかわいいと思っている子が多少変だったとしてもだ。
それを受け入れるのが男の度量だ。
少し変なぐらいはウェルカムってなもんである。
そもそも人間なんてのは変わった生き物で、46億年という月日の過ぎた地球上で、なんだか知らないが最も繁栄している。
しかも白人、黒人、黄色人種と形が似てるだけでどっから見ても別物なのにも関わらず、人類みな兄弟なんて言ってのけてしまうのだ。
ミルみたいなかわいい子が、多少変な力を持っていたところでどうという事もない。

多少…どうやら俺はミルの超能力も人間の多少の違いという事で受け入れる事ができたようである。
アフリカには視力10.0とかいう人もいるんだ、見るだけで石を浮かせる人間がいたって不思議じゃない。
それにしても「よろしく」とはどういう事なのか?
俺は別に何の能力も持ってないわけだし。
まさか、
「お願い、内緒にしておいて。何でもするから…」
「じゃあ僕と付き合ってくれないかな。」
「いいわ。実は私もずっと前からあなたの事…」
「ミル!」
「修!」
あっ、修というのは俺の名前ね。
そして、抱き合う二人。
ここから先は18禁、ってな具合になっちゃうんじゃないのー!

ようやく放課後を迎えた。
案の定ミルはこちらにやってきた。
「ちょっと来て。」
またそれかい。
俺は急いで後を追った。

再び人気のない中庭。
さて、何を話しかけたもんだろう。
「別に内緒にしなくていいからね。」
ミルが先にそう言った。
すでに予定とは違う方向に進んでしまったようだ。
「いや、でもエスパーだって知られたら困るんじゃないか?」
「誰が信じるの?」
誰も信じないでしょうね。
俺だって信じられなかったし。
「じゃあ何のようでここに呼んだんだ?」
「あれ、実は見せてたの。」
カンニングをしてる姿を大胆にも人に見せるなよ。
「ふーん、何で?」
「それは…」
言葉に詰まってしまったようだ。困った顔をしているミルもかわいい。
ブルッと体が震えた。
そういや秋とはいえもう寒い。
紅葉もそろそろ終わりそうな感じだ。
少しさびしくなった銀杏も、とがりまくった針葉樹も一様に寒そうだ。
まだ冬ほどに透き通った空気ではないけど、それでもYシャツ一枚じゃ少し寒い。
そもそもこの中庭は吹き抜けになっているので、風がびゅんびゅん吹いている。
時には女子のパンチラが拝める。
狙って立てたなら相当なエロ建築家だな。
まあそのせいで近づく人は少ないんだけど。

「わたし、あなたの事が好きなんです!」
顔を真っ赤にしながらミルはそう言った。
「わかった、俺も好きだし。じゃあ、付き合おっか。」
「よろしくお願いします。」
落ち着いていた。
絶好のボールが転がってきたゴール前のストライカーの気分だ。
どうやら上手い事ゴールを決める事ができたようだが、頭の中は真っ白だった。
ミルは本当に嬉しそうだ。
俺自身も、さっきまでの寒さは消え、むしろ暑いぐらいに体温の上昇を感じる。
あれ?俺、今告白された?ミルに?
我に返った。
やっぱり目の前には、嬉しそうなミルの顔。
こ、これはもしかして、彼氏彼女の関係になったって事なのか?
「あの…、俺の彼女になってもらえるんだよね?」
「うん。」
敬語の時間は終わってしまったらしい。
「ふわー、安心した!修君も私の事好きだったなんてびっくりだよ。
それならもっと早く告白しておけば良かったな。」
やっぱり付き合うみたいだ。
いや、そう言ったから当たり前なんだけど、付き合うってなんだ?
ミルが俺の事を好きだったなんて。
それにしても暑いな、Yシャツを脱ぎたいぐらいだ。
「と、とりあえず。一緒に帰ろうか!」
「うん!」
横にミルを従えて、俺は帰路についた。
何を話したのかはよく覚えていないが、結局のところ「付き合えて嬉しい」
とか、「メルアド交換しよう」とか、「じゃあ早速明日デートしよう」
なんて話をしたはずだ。

彼女ができた、それもずっと好きだった安藤ミルだ。
問題が一つあるとすれば、彼女がエスパーだって事だ。
まぁそれも多少の違い。
なんとかなるだろう。
それよりも、明日のデート何しようかな。
色々考えていると、ミルからメールが届いた。
「OKして貰えて幸せです。明日が楽しみだ〜
どこ行くか決めた?決めてなかったらとりあえず買い物いこうよ。
服とかも買いたいし。お揃いのストラップとかも買っちゃったりしようよ。
それから…」
長く、どうでもいい内容ばかりだった。
しかも、なんとなく束縛感がする。
まぁ、でも女の子だしな。こんなもんなのかもな。
返信と。
「俺もうれしいよ。じゃあ明日は買い物で、駅に十時ね。」
なんだか用件だけの素っ気ないメールになってしまった。
痛い!
頭が痛い!
万力で締められているみたいだ!
再びメールが来た。
「メール短すぎ!おしおきです(〃*`Д´)」
痛みが治まったのでメールを打ちだした。
「ごめん、ごめん。でも痛いよ。おしおきにしちゃ痛すぎるよ。
それに…」
さて何を書いたものか。
下手な事を書くと
痛い!
メールが来た。
「遅い」
何とか許されるメールを送る事ができたが、
明日のデートは多いに不安だ。

エスパーミルの退屈しのぎ 第一話「ミル」
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2008年11月04日

エスパーミルの退屈しのぎ 第一話「ミル」

俺は安藤ミルが好きだ。
成績優秀、スポーツ万能、性格も悪くはない、ちょっと明るすぎる気もするが。
そんなわけで、俺はいつも彼女を見ていた。
休み時間も、授業中も、テストの時間もだ。
わざわざテストの時間などと言ったのには理由がある。
それはこないだの現国のテストの時だ。

いつものように彼女の方をちらりと見ると、なんとなく違和感があった。
テストの時に、遠くを見ながら思い出す。なんて事はみんなやっている。
ミルもよくそういった仕草をしていた。
その時の彼女の目は真剣で、それでいて焦点があっていない、斜め後ろから見てもかわいい…なんて
事はどうでも良いんだった。とにかく何かを思い出してる顔だとその時までは思っていた。
しかしだ、どうやら彼女はカンニングをしている。いや、カンニングと呼んでいいのか?
どうやっているのかはわからない。
彼女の前に透明なシートが浮かんでいるのだ。
それも、ばっちり答えが書いてある解答用紙がである。
俺があっけにとられていると、彼女はちらりとこっちを見た。
その時の、何とも言えない気まずそうな表情から察するに、カンニングである事は間違いなさそうだった。
不思議なのは、前後左右、教壇から見張ってる教師も含めて誰も気がついていない事だった。
試しに目線で教師に訴えて見たが、にっこりと笑顔を返され、あごで続きをやるように促された。
凄まじいまでに大胆なカンニングである。
それどころか、解答を盗み出してすらいるのだろう。
俺の中の安藤ミル像にちょっとした修正を加えなければならないようだ。
動揺を立て直せないままに、テストは終了した。もうボロボロだ。
ミルは俺をじっと見つめ、決心したようにうなずいてこっちにきた。
「ちょっと来て。」
それだけ言うと教室から出て行った。
俺は、急いで後を追った。

人気のないところまで行くと、ミルは振り返った。
「見えた?」
「ああ、見えた。」
誤魔化すよりも、正直に言った方がミルと深く話せそうな気がした。
「そっか、じゃあしょうがないな。初めてばれちゃった。」
照れくさそうな笑顔もまたかわいい。
「一体あれは何なんだ?他の人には見えてなさそうだったし。」
「うーん。」
人差し指を口元にやって考えている、これは彼女のくせだ。
「私、エスパーなんだよね。」
さらっと言った割りには、ずいぶんとぶっ飛んだことを言われた。
エスパー?
超能力者って事だよな。
「へっ?」
物凄く間抜けな声を出したのが自分でもわかった。
「エスパーって、超能力者って事?」
自分の思考をなぞるのが精一杯だった。
16歳の女子高生が、言うに事欠いてエスパーだ。
俺が思っていたよりも、ミルはイタイ子だったようだ。
「イタイ子だって思ってるでしょ。」
図星です。
まさか読心術までエスパーが使えるとは!
ということはだ、俺がミルの事を好きだということもばれてるわけで、
やべぇ心の中ではミルとか名前で呼んじゃってるのもばれてるのか、恥ずかしい。
「別に心を読んでるわけじゃないから安心してよ。」
よっぽど顔に不安が出ていたようだ。
「何か証拠でもあるのか?安藤がエスパーには全然見えないわけだが。」
冷静に考えてみれば、エスパーなんてものはこの世には…
なんて思ってると、ミルはりんごを取り出した。
「見てて。」
ぐっと力を込めると、りんごを握りつぶし、満面の笑みでこっちを見た。
「どう?信じてもらえた?」
「信じるも何も、それは馬鹿力っていうんじゃないか?」
いや、驚いたけれども、スポーツ万能なミルなだけに握力が強いって事もあるかもしれない。
「ああ、じゃあこんなのはどう?」
トランプを取り出すと、俺に一枚カードを引くように言ってきた。
ミルに見えないようにカードを見てと。
「ハートの9!!」
「当たってる。凄い手品だな。」
ミルは人差し指を俺に向けたまま、口をあんぐりと開けて硬直してしまった。
「ふう、疲れるからあんまりやりたくないんだよな。」
そういうと、ミルは近くにあったほどほどの大きさの石をじっと見た。
ズズッ
引きずるような音がして、石は少しだけ浮いた。
おお、信じたい。信じたい。彼女はきっとエスパーに違いない。
だが、俺の口から出た言葉は、
「そこまでいくと、イリュージョンだな。」
だった。
ミルが俺を睨んだ。
そんな目で見ないでくれよ。
俺だって信じたいけどさ。
常識で考えたら、こんな事信じられないだろう。
って、首絞められてる!
手を使わずに首絞められてるよ、俺。

「信じます!信じます!信じるから離して!」
ミルの目から力が抜けると共に、俺の首を絞めていた何かもなくなった。
「信じてもらえたみたいで良かった。」
まだ、首に若干の違和感は残ってますよ。
「安藤にそんな力があるなんて驚いたよ。」
俺は素直な感想を口にした。
キーンコーンカーンコーン
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、俺たちは急いで教室へと戻った。
「これからよろしくね。」
首の事を思うと、ミルの笑顔がちょっと怖かった。
よろしくと言われても、特に何もないだろう。
それでも、二人だけの秘密を持てた事に俺は満足していた。
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2008年11月01日

さよならの価値。

「あなたはいつも正論ばかり言う。」
彼女はそう言って、僕の元を去った。
僕に彼女の気持ちはわからなかった。
正論をいう事の何が悪いのだろう?
だが彼女は去っていったのだ。今更どうしようもない。

それからしばらくすると、彼女は許して欲しいと僕の元に戻ってきた。
僕は何も言わずに彼女を許した。
「あなたの正論は居心地が良い。許せない自分を許さないでいてくれる。」
僕は彼女が過ちを犯したとは思わない。
だが、彼女は自分自身を許してはいないようだった。
僕はただ、彼女を許し続けた。
彼女はそれを快く思ってはいなかったようだった。

ある日家に帰ると、一通の手紙がポストに入っていた。
彼女からの手紙だった。
「あなたとは暮らしていけません。
あなたの子供を堕ろした時、私はあなたを憎みました。
あなたの言うとおり、私達の経済状況では子供は育てられなかったかもしれない。
そんな正論を受け止めるだけの力が、その時私にはありませんでした。
勝手に出て行った私を、それでもあなたは許してくれました。
嬉しかった。
けれども私は今の今まで一度だって自分を許す事ができませんでした。
私の痛みは、私が治すしかない。
あなたのやさしい瞳はそう語っていましたね。
ありがとう。
その瞳を見る度に、私は何とか頑張ろうと思いました。
でも、もう限界みたいです。
愛してます。
さよなら。」

手紙にはそれだけ書いてあった。
僕はその手紙を読んで、自分が彼女をどれほど愛していたのかに気がついた。

部屋の扉を開けると、部屋の真ん中から彼女が僕を見下ろしていた。
「びっくりしたなぁ。」
一人そう呟いてみた。
僕は手ごろなロープを柱にくくり、彼女の前に来るように調整した。
椅子の上に立ち、ロープを首に巻いた。
「愛してるよ。」
そう言ってから椅子から飛び降りた。

気がつくと、見知らぬ土地にいた。
殺風景なところだ。
すぐ近くに彼女はいた。
彼女は笑いながらこう言った。
「さよならって言ったのに。」
「僕はまだ君にさよならを言っていなかったからね。」
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2008年08月07日

呪いのカメラ

あるメーカーが呪いのカメラを発売した。
といっても、別に呪われているわけではない。
レンズに細工がしてあり、容易に心霊写真が撮れるというただのジョークグッズだ。
インスタントカメラなのですぐに写真を見る事ができ、ちょっとしたパーティーの時などに使って盛り上がったりするのだ。


圭子はこの呪いのカメラがどうも好きになれなかった。
幽霊など信じていないが、どうにも気味が悪いではないか。
それに、このカメラを持ってくるように人間は大体好きになれなかった。どうにも、お調子者というか、責任感の欠如したような輩ばかりが、このカメラを持ってくるのだ。
そんな事を思いながら今日もぎこちない笑顔で写真を撮られるのだった。

そう、いまや呪いのカメラは大ブームになっている。
呪いのカメラは真実を写す!の、キャッチコピーで大ヒット。
普通の大学生ならば、毎日のようにどこかしらでパシャパシャ撮られることになる。
今日も学食でご飯を食べているところに、カメラを持った惣一がやってきて一枚撮られた。
「見ろよ、これ。」
惣一に手渡された写真を見ると、自分の顔の辺りが赤い光によって見えなくなっていた。
「せっかく笑顔を作ったのに、わざわざ消してくれるなんてありがたいわ。」
そう、圭子がこのカメラを嫌いなのはこの点だ。カメラに撮られる時に、どんなに良い顔をしたつもりでも、いざ見ようとすると映ってないなんて事はざらである。ひどい時には、ゆがんでいたり顔が消えていたりする。
「それにしても、最近顔が消えてる事が多いよな。何かあるんじゃないの?」
惣一はニヤニヤしながら隣に座った。
「馬鹿なこといわないでよ。この美しい顔に傷でも付いたらあんたが呪われるわよ。」
冗談めかしてそう返したものの、圭子自身も自分の顔が最近映らない事が気になっていた。いくらパーティーグッズとは言え写真は写真。何か不吉なことがあるかもしれない。
写真は魂を写すとも言うではないか。
「そうだよな、俺の大好きな圭子の顔に傷が付いたら大変だ。…って、そんなことあるわけないし。」
圭子は無視して手鏡を見た。
惣一はいつもこんな風に人をからかう、付き合ってるわけでもないのに好きとか言うなよ。
手鏡に映る自分をしっかり確認した。
顔が赤くなってるんじゃないかと思ったのだ。
どうやらそんな事はなかったが、気になる事があった。
「あたしの顔どっか変わった?」
なんとなく、なんとなくであるが、どこか自分の顔が違って見えるような気がするのだ。
「別に、いつも通りかわいいよ。」
こいつは…。
圭子は無視して、もう一度手鏡を見た。
漠然とした不安を感じる。
これが自分だろうか?
本当に自分の顔なんだろうか?
そういえばちょっと疲れてるし、むくんでたりするだけなのかな。
「ねぇ、今日暇?」
「うーん、暇じゃないかな。」
そう言い残して圭子は席を立った。
「どこ行くの?」
「授業、惣一も早く食べないと遅れるちゃうよ。」
本当は暇だった。
一種の照れ隠しなのだ。圭子は面と向かって好意をぶつけられると、ついつい逃げてしまうくせがあった。
まぁもうちょっと上手い誘い方もあるとは思うのだが。

圭子は授業中に端っこの方でぼんやりと外を眺めるのが好きだった。
今日もそうやって、葉っぱが青々しくなってきただとか、くだらないことを思っていた。
ふとさっきの事が気になり、窓に映る自分を見た。
やっぱりどこか違うのだ。
どこがかはわからない。それでもどこか違うのだ。
ボーっとしている圭子を教授は見逃さず、英語の訳文の回答者に指名した。
あたふたしていると、授業終了の鐘が鳴り、それは宿題という事になった。

「どうしたのボーっとしちゃって。」
惣一がまた声をかけてきた。
「わかんない、何かちょっとね。」
圭子は明確には答えずに席を立った。
自分が自分じゃないような気がするなんて言ったらまるで変人じゃないか、よっぽど痛い奴だと思われてしまう。
惣一は圭子の後を追った。
「一緒に帰ろうよ。」
「ごめん、寄る所あるから。」
寄る所なんてないのに。
圭子はますます自分が自分じゃないような気がしていた。

しばらく歩いていると、横に車が止まった。
また惣一だった。
「送るよ。」
「歩くからいい。」
そう答えて圭子は歩き出そうとした。
「乗れよ。」
惣一の強い声に圭子は驚いた。
「乗ってけよ。」
惣一はもう一度、今度は優しい声で圭子を誘った。
圭子は無言で車に乗り込んだ。

車内は沈黙していた。
なんとなく気まずい空気。
惣一が強く誘ってくるなんて珍しかった。
「あのさぁ…」
呼びかけるような声だったが圭子は答えなかった。
車の窓に映る自分を見ていた。
歪んでいた、どこか歪んでいた。
ぐねぐねと揺らめき、はっきりとしないのだ。
惣一は車を止め、圭子の方に真剣な眼差しを向けた。
「俺の事どう思ってるの?」
もはや圭子の顔はぐちゃぐちゃだった。
目や鼻がどこにあるのかもわからないくらいに溶け出し、口が額の上にあるようだった。
「どうも思ってない。」
勝手に動く口を止めることができない。
なにしろ口はもう額を通り越し頭頂部にまで行ってしまった。
「そっか…」
惣一は一瞬ためらった。だが言った。
「俺は圭子のこと好きだよ。」
その瞬間、圭子の顔は爆発した。
もはや見る影もなかった。
窓に映るのはただの化け物だった。
「嘘をつかないで。」
化け物は言った。
「嘘なんかじゃない。」
惣一はゆっくりと告白した。
「ずっと好きだったんだ。」
圭子はもう自分が戻って来れないんじゃないかと思った。
このままただの化け物に乗っ取られてしまうんじゃないか、そう思うと惣一のことなど考えられなかった。
「私は惣一のこと…」
涙が溢れてきた。
どうしようもなく涙が溢れた。
私は化け物だ。
人を愛する資格などない。
圭子はもはや人間とは思えない自分の顔をずっと凝視していた。
答えを出せなかった。

突然、惣一は圭子をぐいっと引き寄せキスをした。

その瞬間、その瞬間だった。
圭子は自分が元に戻っていくのを感じた。
窓を見ても、鏡を見ても、それが自分自身の顔である事がわかった。
「私も惣一が好き。」
盛り上がった気持ちは抑えることができない。
二人はその晩には結ばれていた。

そうして、次の朝が来た。
圭子はもう一度鏡で顔を確認した。
自分の顔だった。
そのうちに惣一も起きたようだった。
「ねぇ写真撮らない?」
圭子は呪いのカメラを手に取り、二人の顔が入るようにシャッターを押した。
出てきた写真には、圭子の顔ははっきりと映っていたが、惣一の顔は消えていた。
圭子は笑って、今度は惣一だね。なんて事を言った。
ひとしきりベッドの上で愛し合った後、惣一が顔を洗いに行った。
圭子は顔がにやけているのがわかった。
幸せだ。
「惣一。」
圭子は洗面所の惣一に呼びかけた。
「んー?」
「大好きだよ!」
惣一の笑う声が聞こえた。
「俺も好きだよ!」
圭子も笑った。
「呪いのカメラは真実を写す…かぁ。」
圭子は、自分で自分を撮ってみた。
出てきた写真には、笑顔の自分が映っていた。
それがたまらなくうれしかった。
「ところでさ…俺ってこんな顔だったっけ?」
圭子の笑顔はすぐに消えた。
ラベル:創作 小説
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2008年08月05日

斜線と破壊

死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたくない
ラベル:創作 小説
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2008年08月04日

擬音あtらおの

ぶおーんぶおーん
頭の菜亜kでおtごがあつ
ぐるぐるぐるぐる
mr0あgあおえmわtyy
ないないない
あたfらまれいおbげえおをgあはこーえしtyれ
てくてくてくてく
越えあえ尾k田rのあgじあえろyじゃklrまあrがれじお
ラベル:創作 小説
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2008年08月02日

人間空港

人間、特に男にとっては、空を飛ぶということは一つの夢だった。
ライト兄弟が飛行機を飛ばしても、男達は空を見上げ続けた。
そういう事ではない。
俺たちは自分の力で飛びたいのだ!


一郎は子供の頃に空を飛んだ事があった。
下り坂を思いっきり走っていたら急に体が浮き上がった。
そして、地面すれすれをヒューと滑空したのだ。
坂が終わるところで着地して、そのまま家まで歩いて帰ってきた。
その時はそんなものかと思っていたが、よくよく考えてみると人間が空を飛ぶなんて事があるのだろうか。
ためしに母親に聞いてみたが、いいから勉強しなさいと言うだけだった。
いや、だが確かに自分は飛んだのだ。
それが事実であるのだからして、飛べない人間の方が悪いのだ。

だとしても、それが異常なことは一郎にもわかっていた。
もしかしたら研究施設などに入れられて一生出てこられないかもしれない。
そう思うとそれ以上は何も考えられない、もう二度と飛ばない事を心に誓った。


それから二十年が経った。
一郎は二十六歳になり、まぁそれなりの生活をしていた。それなりというのは、それなりの生活だ。
実家を出て一人暮らし、恋人がいて、会社に勤め、なんとなく日々を乗り越えている。たまに実家に帰っては、家族と過ごして心の平安を取り戻す。そんな暮らしだ。
近くには、結構急な坂があり、子供の頃はその坂の上から眺める景色が好きだった。
今でも実家に帰った時には、坂の上から遠くの沼を見下ろす事があった。そうすると、妙に気分がすっきりするのだ。
いつものように坂の上に立った時にふいに思い出した。
「そういえば、この坂を駆け下りて飛んだ事があったな。」
自分で思い出しても笑ってしまう。
なぜそんな風に思ったのだろう。
きっと、小さな頃の自分にはここからの景色は空を飛ぶほどに気持ちの良い物だったのだ。
懐かしい気持ちでいっぱいになったので、思わず坂を駆け下りてみた。
坂の中ごろまで来た所で、体がふわっと浮き上がった。
えっ?と思った時には空高く舞い上がっていた。
なんだこれは?俺は明らかに空を飛んでいる。
一郎は動揺しながらも、必死で体をコントロールした。
鳥が飛ぶようにすればうまくいくかと思ったが、どうやら違うらしい。手を広げた瞬間に体がぐっと地面に近づいた。
慌てて走りだすと、どうやら安定した。
何度か試した結果、頭の向きで舵を取り、手足を走るように動かす事で自由に空を駆ける事ができる事がわかった。
風は気持ち良いが、結構しんどい。
慣れると、滑空する事で休む時間を作れた。
滑空する時は、脇をぴったりと閉じて気をつけの姿勢をする。
なぜなのかはわからないが、手を開くと落ちてしまうのだ。
三時間ほど夢中で空を駆け回り、いい加減飽きてきたので帰ろうとすると、下界には人だかりができていた。
どうやらテレビカメラも来ているようだった。
せっかくなので、そのど真ん中に降りてやることにした。
レポーターの女性がおそるおそる近づいてきた。
「あなたは一体?スーパーマンですか?何故空を飛べるのですか?」
そう言われても困った。
「あそこの坂を駆け下りたら、空を飛べてしまったんです。」
「はぁ。」
気まずい沈黙が流れたので、とりあえずその集団を連れて坂の上まで行った。
「この坂を駆け下りたら、急に体がふわっとですね。はい、まぁやってみます。」
そう言って、さっとやってみるとやっぱり飛べた。
人々は仰天しているが、飛べてしまうものは仕方ない。
レポーターがカメラに向かって、何事かを喋ったなと思うと、おもむろに駆け出した。

飛んだ。

ええーー!とか何とか言いながら動きを止めたレポーターはすぐに落ちた。
「だめだよ。ちゃんと走ってないとすぐに落ちちゃうよ。」
一郎は戻っておおまかに飛び方を説明した。
レポーターも今度はうまく飛べた。
はぁはぁ息を切らせて戻ってきたレポーターのスカートは、タイトだったせいかすっかり捲れ上がっていた。
しきりに世紀の大発見と繰り返すレポーターの後ろで、どんどんと人が飛び上がっていった。
人間が空を飛ぶ時代がついにやってきたのだ。

その後学者の調べによってわかったのは、角度が25.2度から25.6度の間である坂を3m走ると飛ぶ事ができるという事だけだった。
原理はわからずとも、飛べるのならば飛ぶ。それが人間というものなのだろう。
一ヶ月後には各地に人間空港が登場し、そこら中を人が飛び回るようになった。
そうは言っても、結局走るのと大して変わらないので、利点は信号待ちをしなくて済むぐらいのものだ。
だが、そこに目を付けたテレビ局が空飛びダイエットと称して放送、女性に大流行した。
結果、スカート姿の女性は減り、世の男性陣は大いに嘆く事となった。

一郎はその後、第一発見者として世界で賞賛された。
一郎が飛んだ坂には、『一郎が3mで飛んだ坂』という意味を込め、新たに「一三坂」という名前が付けられた。
その年のハプニング大賞には、パンツ丸出しで空を駆けるレポーターが選ばれる事になった。
人類が空を飛んでも、男達は空を見上げる事をやめなかった。
ラベル:創作 小説
posted by どらっくす at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

女の肌に私の汗が落ちる。
とたんにそれは混じるのだ。
そして同じ宇宙となる。
ラベル:小説 創作
posted by どらっくす at 03:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月01日

空の蓋

私の世界にの空には蓋がしてある。
水の上に陸が一つだけあり、その上に私は住んでいる。
水は減る事はあっても増える事が無い。たまに空の蓋が開いては、この世界の水を取っていく。

あの蓋から外に出たら、どんな世界が待っているのだろう。
次に開いたら外に飛び出してしまいたい。
そう思っては、言い表す事のできない恐怖に駆られ、この世界に今日まで残っている。

今日もまた蓋が開いた。
地面の下の水が、どわぁーっと音をたてながら空に落ちていく。
私は水に揺られる陸に必死にしがみついてそれをやり過ごした。
水が落ちた後に、一瞬だけ蓋の外が見える。
その世界がまた、まばゆい光に包まれていてとっても魅力的なのだ。
「そろそろ外に出なくてはならないだろうか?」
自分に問いかけても答えは出ない。

それはそうなのだ。
私は答えを知っている。
いつかは外に出なければならないのだ。
最初は溺れる程にあった水かさは、今はもう私の背丈ぐらいまでしかない。
次か、その次か。
完全に水はなくなってしまうに違いない。
そうなれば、きっともう空の蓋が開く事はないのだ。

それを知っていてなお、答えが出ないのだ。
外に出れば何が待っているのか?
恐怖だ。
あのまばゆい世界は、私を誘う罠なのだ。
そして私は、これまで味わった事のない恐怖を味わって死んでしまうに違いない。
だが、このままこの世界に残っていても同じ事だ。
あの蓋が開かなくなれば、私は息が出来なくなって死ぬのだ。
どちらにしても死ぬのなら、このままこの中で死んでしまおう。
私はそう決めた。

そしてまた今日も水が空へ落ちた。
私は陸にしがみついた。
いきなりぷちんと音がしたかと思うと、私は空に向かって勢いよく落ちていった。
陸の鎖が切れたのだ。
あと少し、あと少しだけ頑張ってくれれば、私はこの中で死ねるはずだった。

落ちる、落ちる。
私はそれでも陸にしがみついていた。
もう何も信じられないが、この陸にしがみついていればなんとかなるかもしれない。
そうだ外は素晴らしい世界かもしれない。
そして私は、この陸に乗って旅をするのだ。
陸は水に流され、どんどんどんどん空の穴に近づいていく。
行け!行くんだ!
必死にしがみつきながら私は興奮していた。
この先に何があるんだ。
私はこれからどうなるんだ!!

ふいに陸が動くのをやめた。
水がなくなってしまったのだ。
「待ってくれ!まだ閉めないでくれ!俺は外に出るんだ!」
私の声が響いた。ぐわわんと世界に響いたのだ。
そして、空の蓋は閉まった。
私は陸と共にまた底に落ちた。
陸がクッションになり怪我はなかった。
だが、私は外に出られなかった。
幾日も幾日も私は空を眺め続けた。
いつかその蓋が開くのではないかと思って。
結局私が死ぬまでに、空の蓋が開く事は二度となかった。
ラベル:創作 小説
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2008年07月31日

つまらない物語

どこにでもあるような石ころがあった。
誰の目にも触れるが、誰にも気にされないようなやつだ。
どこかへいこうとしても、自分には足がなく。
誰かに蹴られなければ、進めないようなやつだ。

ある朝そいつは目覚めた。ぱっと起きたのだ。
石のくせに意思を持った。どこにでもあるような石のくせにだ。
雑草と吸い殻、隣には犬の糞だ。
まったくもってくだらない、どうしようもない。
どうしようもないのだ。
動こうにも動けず、死のうにも死ねず。ただ終わりがくるのを待っているだけなのだ。
終わりとはなんだろう?
石は砕けて砂になるだろう、俺の人生はそこで終わりなのか?
それとも俺は無数の俺自身となって生き続けるのか?
それは果たして俺自身と読んで良い物なのか?
わからないことだらけだ。

そうして日が暮れて、夜になった。
誰に蹴られる事もなく、ただそこにあるだけの石だ。
こんな事ならば目覚めなければ良かった。
そうだ死んでしまおう。
石は死んだ。
翌朝になっても目覚める事はなかった。
その次の日も、その次の日も、二度と目覚める事はなかった。
だが石は存在した。
誰に気にかけられる事もなく、そのままそこに存在した。
やがて砂になるまで、そのまま石は存在したのだ。
ラベル:創作 小説
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2008年05月14日

ドラゴンボール外伝「ベジータ対アックマン!?地獄への特急便」

「ベジータ対アックマン!?地獄への特急便」

ベジータは占いババの館にやってきた。
「ここがきたねぇババァのやっている占いの館か。どれ一つ占ってもらうか。」
(なにしろ最近ブルマのやつの様子がおかしい…。もしや、あのヤムチャとかいうふざけた野郎と浮気でもしてるんじゃ。くそうもしそうならぶっ殺してやる。)
「ほっほっほ。悩んでらっしゃるようじゃな。」

ピクンッ

(い、いつの間に後ろに回りこみやがった。このババァ)

「ほっほっほ、ここに来る事は最初からお見通しじゃったよ。」

「なら話は早い。とっとと占うんだな。」

「そういうわけにはいかんのぉ。わしもだいぶ年じゃて。というてもお主、金を持ってそうではない。どれ…」

そういうとオババは歩き出した。

「どこへ行く!」
ベジータは怒りの表情を浮かべたが、オババは静かについてくるように言った。
(どいつもこいつもなめた野郎だ。)
そう思いながらもベジータはおとなしく後をつけた。

「なんだこの悪趣味な部屋は!?」
巨大な悪魔の像が向かい合い、長く延ばした舌が絡み合い道のようになっている。下の池もどうやらただの池ではなさそうだった。
「通称悪魔の便所、下の池は硫酸じゃ。落ちればジャーと溶けて流れるでの。気をつけなさい。」
「こんなとこで一体何を…」
する、と言いかけた所でオババは声をあげた。

「いでよ!アックマン!!」

ボワン

「はっはっは、よく来たな。私がアックマンだ!!」
角と羽の生えたスーパー戦士アックマン。この悪魔の便所ではいまだ1敗しかしていない最強戦士だ。
「アックマンを見事に倒す事が出来れば、そなたのことを占ってしんぜよう。」

「ほう、このばい菌男を倒せば良いんだな。」
「バイキンだとぉ!!」
アックマンは血管が顔に浮き出るほどの怒りを覚えた。
(よりによってばい菌だと。私はあいつらが一番嫌いなのだ。特に虫歯のやつはひどい!姿は似てるくせに私の歯まで…)
だが次の瞬間、アックマンは見覚えのあるものがベジータの腰に巻かれているのに気づいた。
「し、しっぽ!!!」
(そう、忘れもしない。あの孫悟空とかいうガキ。この私が唯一負けを喫したあのガキだ。あいつにも確かしっぽが生えていた。)
「おっ、お前孫悟空というガキを知っているか?」
「孫?ああ、カカロットの事か。知ってるなんてもんじゃない。あいつは俺と同じ戦闘民族サイヤ人だ。もっともやつは下級戦士、俺は王子だがな。」
「そのしっぽが、サイヤ人とかいうのの証という事か。」
「そうだ。」
アックマンは考えた。
(私のアクマイト光線は悪の心がないと効かない。事実孫悟空には効かなかった。あれは民族性なのか、それともやつだけが特別なのか…おとなしくここまで来てるし、質問には答えてくれる。顔は悪そうだが意外といい奴なのかもしれん。ここは…)

「おい、ベジータとやら、一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「お前犯罪を犯したことはあるか?」
「犯罪?なぜ王子であるこの俺がそんな事をしなければならんのだ!」
(む、むう困ったぞ。これはいい子ちゃんである可能性が高い。そりゃそうだ、王子様だもんな。)
「もう終わりか、そろそろ殺すぞ。」

!!!

「ちょっ、ちょっとまて。まさかお前人を殺した事あるのか?」
「殺す?星ごと消した事すらあるが?それが戦闘民族サイヤ人のやり方だ!」
(こいつ極悪人じゃないか。これはもらった!)

「そうか、アックマイト光線!!!

いきなりだった、アックマンの奇襲をベジータはもろに喰らってしまった。
ベジータの周りには、もやのようにゆがんだ空気が集まっていた。
「ほれ、いまに悪の心が爆発するぞ!ほれ!ほれ!」
ベジータは少し不思議そうな顔をしたが、それきり微動だにしなかった。
「ほれ、どかーん!!どかーん!!」
ゆがんだ空気が徐々に晴れてきた。爆発はしなかった。
「あっ、あれ?どかーん!!どかーーん!!」
「終わりか?」
ベジータはすっと近づくと、思いっきりアックマンを殴り飛ばした。
「な、なんで?」
答えを聞く間もなくアックマンは悪魔の便所に流された。
「サイヤ人の王たるこのベジータ様が悪であるはずがなかろう。くそったれが!!」
ベジータの声が響いた。

「それで、ブルマはどうなんだ?」
ベジータはオババを問い詰めた。
「心配いらん、浮気などしておらんよ。ほれ!」
大きな水晶玉にはケーキを作るブルマの姿が映し出された。
「おおかた、誕生日でも内緒で祝おうとしているんじゃないかね。」
しばし水晶玉を見つめたあと、ベジータは無言で飛んでいった。

「ほっほっほ、お熱いこった。きっと息子の名前はトランクスになるね。」
飛んでいくベジータを見ながらオババはつぶやいた。

「それにしてもわたしの占いは百発百中だね。あの男が上手い事アックマンを地獄に追い返してくれると思ったよ。
なにせ最近のやつらは随分強くなっちまって、みんなただで占って行くからね。給料払わずに追い返せて助かったよ。
どれ、これからは昔通り20000ゼニーで占うとするかね。」

アックマンの戦績
576戦262勝314敗(うち悪魔の便所での敗戦2)
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2008年04月17日

スローイン・チベット

チベット代表対中国代表の試合から、さかのぼること五十七日前。
チベット代表は中国代表に吸収される事になった。
中国は十七人のチベット代表を中国代表に召集することを発表した。
あくまでも、中国の強化が目的であり、チベット人たちの立場は保障されているはずだった。
しかし、この大型補強は、わずか五日で破綻する。
代表浄化の名の元に、ほとんどのチベット代表選手は中国代表を追われ、残ったのはチベット代表の精神的支柱であったダラ・イラマ、そしてチベトウ・ソウ、チベトウ・ジンの三人であった。
そして彼らを待っていたのは、中国代表キャプテン、カン・ミンゾクによる嫌がらせの数々だった。
「お前らにパスを回すはずがないよ。いずれお前達も代表から追い出してやる。」
三人の中でも実力が劣っていたジンへの嫌がらせは卑劣を極めた。
味方にも関わらず練習中に金的を狙われたり、妻に対するセクハラなど、同じ代表選手に対する仕打ちとは到底思えなかった。

「イラマよ、私はどうすればいい?」
ジンはイラマにたずねた。
追い詰められたジンには、イラマの言葉が全てだった。
「ジンよ、耐えるのです。われわれの目的はW杯に出場すること、それもチベット人としての誇りを持ってです!彼らも話せばきっとわかってくれる、同じ人間ではないですか。」
ジンはイラマの言葉に従いひたすらに耐えた。
イラマがいれば、負けることはない。
彼こそは、チベットが生んだサッカーの天才!
彼こそがチベットの誇り!
彼がW杯のピッチに立つ事は、すなわちチベット人全てがピッチに立つのと同じことだ!
「さあジン、練習をしましょう。あなたに教える事はまだまだたくさんありますよ。」


それは三日後の試合前、イラマをミンゾクが食事に誘ったのがきっかけだった。
それを知ったジンは嫌な予感がし、イラマをすぐに迎えに行った。
急ぐ車の中で、ただひたすらにイラマの無事を祈った。
レストランの中に入ると、ミンゾクに向かって走った。
「ミンゾク!お前一体何をたくらんでる?」
「…べつに。」
それだけいうと、ミンゾクはそそくさとレストランを出て行った。
「イラマ!」
「心配するなジン。何事もなかったよ。」
ジンはふうと息を吐いた。自分に対する侮辱であれば、どんなことでも耐えられる。だが、イラマを失うことはチベット人全体の損失となる。
「鞄をお持ちします。」
イラマの鞄を持ち上げた瞬間、バッグの隙間から何かが落ちた。
「失礼しま…」
落ちたものを拾おうとした姿勢のまま、ジンは動かなくなった。
イラマは、ジンの拾おうとしたものを見た。
袋の中に詰められた白い粉、おそらく大麻だろう。
ジンはイラマを泣きそうな顔で見上げた。
イラマはゆっくりと首を振り、静かに歩き出した。
「どこへ?」
ジンはイラマを止めた。
「対話をしに行くのです。」
イラマはゆっくりとそう言った。
「ダメです!あなたが穢れてしまえば、私達は終わってしまう。チベット人は誇りを保てない!」
ジンは大麻を手に取ると懐にしまった。
「これは私がなんとかします。あなたは早く逃げてください。」
「しかし!」
「イラマ!」
ジンはまっすぐにイラマを見つめた。
「イラマ、あなたがいればチベットは必ず蘇えります。私達からどうかあなたを奪わないでください。」
イラマは引き下がった。
このまなざしに込められた思いを背負い生きていく事こそが、自分にできる唯一の事なのだと悟ったのだ。
「さようならイラマ!どうかお元気で!」
「ジンよ、話し合う心を忘れてはなりませんよ。」
ジンの耳に、イラマの言葉がこだました。
だが、彼の心に響く事はなかった。


たぶん続く。
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2007年12月05日

「刑事Zの事件簿」だれが犯人なのか。

ここに一つの轢死体がある。
仮にこの死体をAとしよう。
実はこのA、複数の人に恨まれていた。
一人はこのAを轢いた電車に乗っていた車掌Bである。
もう一人はAを刺したCという男、さらにAを銃で撃ったD、反対側のホームから縄を引っ掛けてホームの下に落としたE、その他諸々実に22人もの容疑者がいた。
刑事Zは弱り果てた。
決定的に死んだと言えるのは、電車に轢かれた時である。
だがどう考えてもその前に死んでいた。
しかもこの22人、なんと全員が偶然今日Aを殺そうとしただけであり、利害関係もなし、完全なる単独犯であった。
「一体誰が殺したことにすればよいのか。」
罪の重さは等しくとも、罰の重さを等しくしていいものか。
というより、俺はこの報告書に何と書けばいいのだ…
どれも正しいようで間違っている気がする。
これはもはや鑑識の調査結果を待つしかあるまい。
「刑事Z!鑑識の調査結果が出ました!」
「そうか!それでなんと書いてある?」
「胃の中に、青酸カリのカプセルが入っていたそうです。」
刑事Zは調書を調べた。
毒を飲ませた六人の内、青酸カリ入りのカプセルを使ったのは…
「そうか、犯人はYだったのか!」
刑事Zは、ゆっくりとたばこを咥え、青い空へと煙を吐き出した。
白い雲と混じりあいながら消えていく煙を見ながら、人生の儚さを思い去り行く刑事Zであった。


「刑事Z待ってください!カプセルは二つありました。Yの方のカプセルは未消化です。また、Aの部屋から遺書も見つかってます。自殺です!」
「遺書には何と?」
「はい。『苦しむ前に、大好きな電車に轢かれたい』と。」
刑事Zはしゃがみこんで頭を抱えた。
ラベル:刑事Z
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2007年12月03日

孤独というもの

俺は孤独だと思っていた。
毎日スロットを打って、虚しさとコインだけを積み上げた。
スロ仲間のケンイチとサブロウだけが、一緒にいる人間だ。
俺達を繋いでいたのは、金だけだ。
俺が店単位での設定を考え、おおよその還元率を推測し、最高の店で最高の台を打たせた。
スロットには、良い台というのが明確に存在する。
1〜6までの設定には、それぞれ還元率の割合があり、6が最高、1が最低というわけだ。
設定6をただ長時間打つ。あいつらにはそれだけをさせていた。
そして勝った金を均等に三等分する。それがルールだった。
ケンイチもサブロウも最初のうちはサラリーマンだったが、俺と本気で組み出してからは仕事を辞めた。
月に百万以上稼ぐ事もざらにあるのに、ちんたら勤めてなんかいられない。
あいつらはそう言って笑った。
仲間が増えても、俺の孤独は終わらなかった。
いや、俺の孤独はより深まったとさえ言えた。
やつらの存在は、ただ俺の孤独を浮き立たせるのみにあり、俺はやつらを見ることで自分の孤独を認識せざるをえなかった。
俺はどこにいるのか。
俺は生まれてからずっと孤独を感じていた。
両親の愛情も、俺には届かなかった。
無償の愛など信じる事ができなかった。
初めてもらったこづかいを、俺は友達との賭けに使った。
と言ってもジャンケンで勝った方が百円、なんていう他愛もない遊びだ。
そいつはグーを出す前に一瞬目を閉じる癖があった。
タイミングを掴んでしまえば、勝つのは簡単だった。
俺は、そいつの持っていた五百円全てを巻き上げて、漫画を買って帰った。
その夜に、そいつが親と怒鳴り込んできた。
五百円を奪い取った事になっていた。
俺は素直に謝ると、そいつをぶん殴った。
振り返ると両親の絶望に満ちた目が、俺を突き刺した。
それからお互いを罵り合いだした。
友達の親は何やら喚きながら帰っていった。
全てがどうでも良かった。
俺は初めから孤独だったのだ。
お前らの教育方針などで、俺はこうなったのではない。
これが悪だと言うのなら、俺は生まれた時から悪だった。
ただそれだけだ。

それから、スロットに出会うまでの話は長くなるのでやめよう。
俺はスロットに出会い。
初めての仲間を得て、そして死んだ。
俺は勝ちすぎていた。
俺は腹を刺され、財布の中身を奪われ、ついでに命も奪われた。
俺は孤独ではなかった。
俺の命は、その強盗にいくばくかの金を届けるためだけに存在していたのだ。
やつはあの金で、何か美味い物でも食ったのだろうか。
それとも、ギャンブルの海へと入り込んだのだろうか。
俺は孤独ではなかった。
ただ、その事に何の意味もなかっただけだ。

inspire:
アカギ―闇に降り立った天才 (第1巻)
『無題』デラックス・リミテッド・エディション(DVD付)/KORN
posted by どらっくす at 14:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月29日

私は人間ですか?カニですか?

胡蝶の夢なんて話がありますが、実際のところ自分という存在に対する問いとして。

「お前って、人間?カニ?どっち?」

と真正面から聞かれた場合に、人間である!とはっきり答えられる人はどれぐらいいるでしょうか?
まぁ人によっちゃ鳥だったり、くらげだったりするかもしれませんが、私はカニですか?人間ですか?

当たり前だよ、人間だよ。と言われましても、じゃあ証明してみろって言われちまいますと証明なんてできっこない。

なんでかって

そりゃ、カニと人間の違いを決めたのは人間だからですな。
つまり、海辺でぶくぶく泡を出してるハサミを持ったやつと、二足歩行で歩いてる体毛の薄い猿との違いってのを定義したのは、他ならぬ人間というやつらなわけで。
じゃあ、明確な違いを示せって言われると、殻がないだとか足が足らんとか言い出すわけです。

じゃあもう少し突っ込めば、
「カニと人間どっちが幸せだい?」
なんて聞かれた日にはもうどうしようもないわけですわ。
生命と言う範囲で見れば、どっちだって幸せになりたいと思って生きているわけです。
ためしにカニに聞いてみたら、そりゃあ凄い勢いで「俺だ」って言うわけですよ。
「オレッチあぶく出しながらバンバン魚食ってるし!マジ幸せ!」ってなもんですわ。
ところがね、ハゲ猿の方に聞いてみたら「最近不景気でねぇ…」なんて言いやがるもんだからさ。
そらぁもう、どっちが幸せかなんて目に見えてますわな。

何を求めて生きていくかなんてものは、悩む必要なんて無いわけです。ただ幸せを求めれば良い。
じゃあ何が自分にとっての幸せなのか、それをもう一度よく考えてみる必要があるわけです!

つまり、

わたしはカニになりたい。


インスパイアされた作品:
人生論 (新潮文庫)/トルストイ
初めての特撮 BEST 1/特撮※1

※1特撮=大槻ケンヂが中心となってなって組んだバンド。不条理かつ猟奇的な独特の歌詞と、プログレッシブな音楽性をもつ。
posted by どらっくす at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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